連載
□片想い。
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生温い風が吹く地下鉄のホーム。
私たちは終電に置いてかれて立ち尽くした。
貴方は私を見て申し訳なさそうに笑った。
私も合わせて苦笑い。
「どうしようか。」
優柔不断な私達は行く宛なんてすぐに決められるわけがなく、とりあえず改札を出た。
暗くなった街を手を繋いでぼんやり歩く。
外の風は少し冷たかった。
あいにく私達はタクシーで帰宅できるほどお金を持ち合わせていない。
ただ無言で歩き続けた。
ふと貴方が「歩いて帰ろうか。」なんて言うから私はぎょっとする。
此処から歩いて帰ったら何時間掛かるんだろうか。
多分道を知っているなら二、三時間で帰れるのだろうけど、お互いに道さえ知らない。
「冗談。」
悪戯に笑う貴方。
私はほっと胸を撫で下ろす。
「武本さんが言うと本気にしか聞こえません。」
そう言って笑うと貴方も笑った。