『届かない真実』 完結
□3.命令
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思った通り、20分後、部長たちは部活に戻っていった。
痛む身体にムチを打ち、のろのろと起き上がろうとするが、すぐに地面に戻ってしまう。
このままじゃ、帰ることもままならない。
リョーマは思わず泣きたくなった。
心配かけたくないのに、心配をかけてしまう。
もう悲しむ両親の顔は見たくないのに……
「(これ以上は母さんが苦しんじゃう……)」
今までのことに対し、母は自分の所為だと責めた。
だから、リョーマは自分のことは何一つ言わないように身を隠すようにしてきた。
………少しでもバレる確率を減らすために
「(まぁ、今はそのせいでこうなってるけどね……)」
全く……どうしろというのだろうか。
青学レギュラーにだけ、バラせばいい?
……絶対にムリ
手塚や大石たちならまだ大丈夫だ。
でも、菊丸や桃城は必ず口を滑らすだろう。
ならば、自分たちの居場所がバレるのも、時間の問題だ。
そんな危険なことはできない。
やっぱり、話せないのだ。
リョーマは小さく諦めの溜息をつくと、再び立ち上がった。
今度はフラフラだが、立っていられた。
「早く帰らないと……」
地面に落ちたテニスラケットを拾い、バッグにしまうと、ゆっくりと担いだ。
そのまま、家にかえるために歩き出す。
……その足取りは不安定だった。
4.誘い