らき☆すた

□おくりもの
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電車の壁にもたれかかり、車窓から流れる外の風景をボーッと見ていた。
空は黄昏、やや赤みを帯びている。

(少し眠たいな‥)

なんだか瞼が重いや。
かがみ「あ。そう言えば明日、何時に行けばいい?」

その声に柔らかな眠気を振り払われ、かがみを見つめる。

(明日?何かあったっけ?)

こなた「へ?」
かがみ「『へ』じゃない。明日泊まりにこないかって、あんたが誘ったんじゃないの!」
つかさ「すごくたのしみだね〜♪」

つかさは満面の笑みで喜んでいる。
そうだ。明日からの2連休、久しぶりにお泊まり会をやろうって誘ったんだっけ。

こなた「あぁ〜、ごめんごめん。少しボーッとしてた。何時でもいいよっ。かがみ達の好きな時間に来てよー」

右手人差し指で頬をポリポリかきながら答えた。

かがみは、にぃ〜と笑みを湛えながら

かがみ「わかったわ。じゃあ、お昼前に行くから。みぃ〜ちりお勉強、教えてあげるわ♪」
こなた「いやいやいやいやっ!丁重にお断りします!そもそもさぁ〜、勉強会じゃないしぃ!!」
つかさ「あわあわあわぁ〜;」
かがみ「そんなに狼狽しなくてもっ♪…ッて、つかさ。あんたもかいっ;」
こなた「でも、結局今回もみゆきさん駄目だったね」

せっかくだから前回、参加できなかったみゆきさんも誘って思い出を作りたかった。

かがみ「親戚との都合じゃ、仕方ないわよ」
つかさ「ゆきちゃんの分までたのしもうね〜」
こなた「そだね。楽しみにしてるよ☆」

そしてかがみ達と駅で別れて、一人家路をとぼとぼ歩く。

(明日は、かがみとつかさでお泊まり会。楽しみだなー)

一緒にゲームをしたり、話をしたり‥そんな情景を想像したら自然と笑みがこぼれた。

しかし、恥ずかしくなって慌てて表情を正した。


街を行き交う人々。
知らない人達。
頬をかすめてゆく風。


そのどれもが森の中に鬱蒼と立ち並ぶ大きな木の様に感じた。

ふと気づけば日はとっくに沈み、空は闇の訪れを呈している。
そこには星が1つだけ爛々と輝いていた。

(夜は、もう寒いね…)

わたしは足を少し遅めて、ひとつ息を吐いた。



翌日ー一



朝、目覚めたわたしはベッドから起き上がりPCの置いてある机へと向かう。

外では小鳥達が朝の挨拶をしている。
カーテンの隙間から差し込む光は部屋を、わたしを照らし、眩しくて目を細め手で光を遮った。
起きて1番にする事は歯磨きでもなければ、食事をする事でもない。

(つッ!‥や、やっぱ朝は痛いな…)

薬の効果が切れる朝は、侵された体が素直に悲鳴をあげる。

昼や夜は薬効が残っているので、まだ普通に暮らせる。

その間は病気である事を忘れてしまう。

本当に辛いのは切れかかる夕方と、完全に切れた朝だけだ。

わたしは痛む右足を引きずりながら、机の引き出しから袋を取り出す。
中からは色とりどりの錠剤と、あのエンジェルパウダーがごっそりと顔を覗かせた。

その中から一回分を掴み、机上に前日の夜から準備してあるペットボトルの水で一気に流し込む。

そのままベッドにもどり身をあずけた。

(このまま痛みが落ち着くまで静かにしていよう)



「・・・いよ、・なた」
どこからともなく声が聞こえる。
(イヨナタ?)

うっすらと目を開けると、そこには見覚えある青い瞳にツインテールの髪…

こなた「あ…かがみん、おはよー」
かがみ「おはよー、じゃない!」

知らないうちに寝てたみたい。

つかさ「ねぇ、こなちゃん?…こ、これって?」

つかさが指差す先には机。その上には…

(し…しまっ!!)

かがみ「こなた。あんた本当は何の病気なの?!この薬の量…おかしいよね?!!」

かがみが真っ直ぐにわたしの目を見据えて確信した上で、そう聞いてくる。
わたしはその覇気に堪えきれなくなり、思わず目をそらした。

こなた「………やだな。ただの…神経・・」
かがみ「じゃあ何で昨日、昼休みに泣いてたのよ?!」

その言葉に驚き、そらした目をもう1度あわせる。

こなた「…ぇ?」
かがみ「目が赤かったわよ。」
こなた「そ、それは…ネ、ネトゲーで徹夜したから・・」
かがみ「本当の事をいいなさいっ!!」

言葉を詰まらせたわたしは視線をそっと自分の足におとす。


(もう…限界…)


隠し通せない事に覚悟を決め、わたしは2人に全てを話した。

こなた「それで…言うに言えなくて……」

つかさは肩を大きく揺さぶり、泣いている。
つかさ「う!…ヒック……うぅ!」
かがみ「…何よ、それ…!!」
こなた「…ごめ・・」



パシーン!



言い終わらないうちに右頬に衝撃が走り、遅れて痛みが走る。

かがみ「私達はあんたの何っ!!?親友じゃないの!?そんな大切な事…言えなかった?!あんた…あんた大バカよっ!!」
その言葉を聞いてわたしは気付く。
親友を裏切ってきた事に。

ポタ‥、ポタ。

わたしは心から泣いた。

こなた「だまってて…、ごめん…」

かがみ「もういい…行くわよっ!…つかさ!!」
かがみは未だ泣き止まないつかさの手をむりやり引き、帰っていった。

(かがみが怒るのも当たり前‥だよね)

わたしはそのまま泣き崩れた。


休みがあけて‥ー一


いつもと変わらない朝。
ただひとつを除いては。

(かがみ達にどんな顔をすればいいだろう‥)

口をきいて貰えるだろうか?
学校へ向かう足取りが重い。
待ち合わせ場所に居てくれる‥訳、無いよね。

顔をしかめ、そのまま待ち合わせ場所を見ないように通り過ぎようとした‥ー一



その時



?「待ちなさいよ!待たせておいて無視?」

その声に振り向くと、そこにはいつもとかわらない2人が居た。

こなた「な‥?つかさとかがみ…何で…」

かがみ「このあいだの…その…、た、叩いて悪かった、わよ‥。
こなたが1番辛いのに、つい感情的になってしまって‥。

‥ごめん。

でもね。親友だから大切だからこそ隠してほしくなかったのよ。それだけはわかって。

あと…こなた?…」
つかさ「親友だから!だから、もっと甘えてもいいんだよ、こなちゃん!わたしたちはずっと、何があっても、親友なんだよ!そう決まってるの!絶対の絶対!!なんだよぅ‥」

やや驚くかがみ。

かがみ「そういう事だから、こなたの夢、私達も全力でサポートさせて!ね?!
それと、みゆきにはあんたからきちんと話す事!わかったわね?」

こなた「‥うん。わかった‥‥。かがみ、つかさ。有難う」

わたしは潤んだ瞳で病気になって以来、最高の笑顔で返した。

つかさ「お姉ちゃん、こなちゃん!がっこ、いこっ」

私達は元気に駆けて行った。


放課後

私とみゆきさん以外、誰も居なくなった教室。
私はみゆきさんに全てを話した。
流石のみゆきさんでも動揺は隠しきれず泣いていた。
そして私の夢を叶えるために精一杯協力すると言ってくれた。


話終えるのを合図に、かがみとつかさが教室に入ってきた。

そして、私達に向かって左手を差し出す。
その手の上につかさが手を重ねる。

言葉は無かった。
2人とも優しい笑みを湛えて私とみゆきさんを見つめる。

私は握られた手の上に自分の手を重ねた。
次いで、みゆきさんも。
まるく円陣を組んだ‥その中心には私達の重なり合った手。

そこでかがみが口を開いた。

かがみ「この先、何があっても私達の絆は消えない。消させない。
今のこの瞬間を心に刻もう。

絶対に忘れないように‥」


私は本当に幸せ者だよ。
みんなと出逢えて、良かった。
口には出さなかったけど、目を閉じて心からそう呟いた。


それからは日増しに体の自由は奪われていった。
薬を飲む頻度も増え、保健室にお世話になる事もあったけど、その度につかさやみゆきさん、そしてかがみの誰かが付き添ってくれた。


一ー‥そして
3月10日の卒業式を迎えた


かがみ「こなた」
「「「卒業、おめでとう」」」

みんなが祝福してくれた。

私は言葉が上手く喋れないから、変わりに笑顔で大きく、大きく頷いた。

みんな

ほんとに

有難う!!

産まれてきて、生きてきて、みんなに出逢って‥みんなと一緒に卒業できて


幸せだよ!!


精一杯の最高の笑顔で答えた。












わたしの


人生は












そこで、
終わったー一‥












葬式当日ー一‥

かがみ「こなた‥寝てるみたいだったね」
みゆき「‥そう、ですね」
つかさ「ひっく‥うっ‥うう」

ほんとに最後まで勝手すぎるじゃない。
夢が叶ったそばから、すぐに居なくなるなんて‥。


そこへこなたの従姉妹のゆたかが走り寄ってきた。

ゆたか「あの‥今日は本当に有難うございます。あの‥それで、お姉ちゃんからこれを渡す様に言われてたので受け取ってもらえますか」

手には3つの‥手紙?
かがみ宛て
つかさ宛て
みゆき宛て
それぞれが受け取り、確認する。

『つかさへ

泣き虫のつかさの事だから今頃大泣きかな?
つかさは覚えてるかな。私と初めて出逢った日のこと。
あの時、つかさは外国人に道を聞かれてて凄く慌てふためいてたよね。
私、それみてほっとけなくてさ。
私の可愛い妹をいじめるなー!ってね。
気付いたら動いてたよ。
今だから言えるけど、あの時にわたしが外国人に言った事、全部デタラメだったんだよ。

つかさ。
優しすぎる所があるから人に流されたりしないようにね。
知らない人についてったりしたら駄目だよ!

あと‥私と仲良くしてくれてありがとね

泉こなた』


つかさ「ご・ごなぢゃん‥‥!」
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