青と赤
□第七章
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オズワルドは屋敷の中をエストアを探して歩いていた。屋敷はそこまで広くないがなかなか見つからない。歩き回っているうちに、屋根裏へと続く階段を見つけた。
階段を登ると小さな部屋とバルコニーへと続く扉が開いているのが見えた。
エストアはそこにいた。
「エストア……」
オズワルドは遠慮がちに声を掛けた。するとエストアは振り返らずに答えた。
「ごめん、なさい……貴方は知らなかったのよね」
そう言うエストアの背中は寂しそうだった。
オズワルドは近づいていきエストアの隣へ立った。
「謝らなきゃいけないのは俺だ……エストアに頼ってばっかで、ごめん!」
エストアは少し驚いたが、またすぐに平静を取り戻すと今や真っ暗になった屋敷の庭を見た。
「構いませんわ。私は……民から頼られていなければただお飾りでイラナイ王女だもの」
オズワルドを見ずに小さな声で言った。
「『いらない』とか『お飾り』とか言うなよ……お前は、皆の為に頑張ってるだろ」
オズワルドは自分に言える精一杯の優しい言葉を口にした。その気持ちが届いたのかエストアは言った。
「ありが、とう……」
「へ?」
気の抜けた返事を返したオズワルドをエストアは笑った。
「ふふっ、励ましてくれて……ありがとう」
エストアは顔だけオズワルドに向けると言った。
オズワルドは柔らかい微笑みを見せる彼女を見つめた。すると、何故かだんだんと鼓動が早くなっていた。
「あ……いや、別に!」
そう言って顔を背けた。
「もう、秋も終わりですね」
エストアは夜空を見上げると言った。オズワルドは少し間をあけると「ああ…」と言う。
しばらくの間、二人は星が輝く空を見ていた。
―――‐‐
「もう、遅いわ。中に入りましょう」
とエストアが言って、二人は屋敷の中に戻った。
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