ごっちゃに
□鳥の想うこと
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「ホ……ホッホ。どうやらあなたに関わると私の計算は狂わされるようですね」
引きつる喉を気にせず無理やり喋ると口の中に血の味が広がった。
どうせ自分が倒れても帝国の護りに支障はないという言葉に偽りはないがこの状態では負け惜しみにしか聞こえないだろう。
握り締めていた手から力が抜け、杖がガランと音を立てて地に転がった。
いつ襲われるかもわからない立場で肌身離さず持っていた杖がこうして無造作に手から離れるのには既視感がある。
つい先ほどのことのような、遠い過去のような曖昧な記憶は一度目の死の時のものだ。
せめて地に臥すような無様な真似はしまい。
黒く霞みだした体を持ち直し顔を上げると、あの真っ直ぐな瞳がこちらを見つめていた。
強く冷静な戦士の瞳の奥に哀れみとも同情ともつかぬものを見つけ目を見開くと、今にも消えそうな体にすっと手が伸ばされる。
躊躇うことなく、視線と同様真っ直ぐに差し出された手。
――――そうか。
瞳の奥に宿るのは哀れみでも同情でもなく。
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