S-dream
□拍手文1
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「なー黒澤ってば。手ぇ繋いでよ」
女がねだる様に言った。
しかし黒澤の方は相も変わらずそっけなく、「嫌だ」と答えるだけだ。
もったいない…3人は思った。
こんな美人に手を繋ごうと言われいるんだ。繋げば良いじゃないか。
どこかクールなイメージの彼女だが、黒澤にねだる姿はどこか幼く、可愛く見えてしまう。
恋人ではないと言っていたが、こんな風にしてるとどう見ても、そっけない彼氏と甘えんぼの彼女だ。
「だってミュール慣れてねーから、黒澤と同じ速さで歩けねーんだもん。はぐれるじゃねーかよー」
尚も彼女は言った。
「ヤなんだよ、あちぃのに手なんか繋いだら汗かくだろ」
「じゃあ腕持つのは?俺がお前の」
「それでもあちぃのには変わらねーじゃねーか」
黒澤も引かない。
何かもう目の前でイチャイチャされてるだけの様な気がしてきた。
「じゃあ…こうやって服持つのは?」
彼女が黒澤の半そでのシャツの裾を持った。
その姿は本当にいじらしくも可愛らしく、丈も羨ましさの中に、もうやってらんねーよとツバを吐き出したい気持ちになった。
デキてる。
絶対デキてるよ、こいつら。
もしくは彼女の片思いだ。
何なんだ、このラブオーラは、鬱陶しい!
そう思っていると、黒澤はようやく「それなら…」と納得していた。
だが彼女はうつむいて何か考え込んでいる様だった。
「………」
「………」
ガツ!
「!!」
「いッ…!!」
彼女がいきなり黒澤の脛を蹴り上げた。
「やってられっかー!」
彼女が吼える。
丈達はその展開に付いて行けずに、ただ呆然としていた。
「何なんだお前!異性と素肌同士が触れ合うのがイヤだなんて!生娘か!!キレイな体でもねーくせによー!!」
「んなっ…!!」
黒澤が言葉に詰まった。
「〜〜〜、お前言うにかこいてソレ言うか!?
てゆーかヒールで脛マジで蹴んじゃねーよ、バカ!」
「マジでなんて蹴ってねーだろが!俺がマジなら黒澤の骨なんて簡単にヒビ入れてんよ!」
「だからそーゆーこえー事言うなよ!!」
友達だ。
この2人は確実に友達だ。
恋愛関係では、絶対に無い。
2人のやり取りを見て、鳳仙の3人は恐らく同時に、同じ思いに包まれた。
「良いから腕ぐれー掴ませろ!!」
そんな彼女の怒鳴り声を聞きながら。
12話初デートの2人。
モドル
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