捧げ物

□○事故ですこれは!
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「違うのマサヤンお願いこっち見て!」

「っせえな、だから事故だったんだろ?」

口では理解してるみたいに言うけど、マサヤンはあれから俺と目を合わせてくれない。

あの後、山ちゃんは放心している俺からしゃあしゃあとマヨ袋を奪い、マヨまみれなんて幸せーとか変人なこと言いながら弁当をうまそうにたいらげた。しかも今度は部活でそのエピソードに尾ひれをつけた上でタケにチクり、俺は今日の練習で何故か何度か彼のバットにぶつかった。事故だと信じたい。

そんなこんなな帰り道、マサヤンのご機嫌はずっと悪い。

「マサヤン怒らないで!今回は本当に俺悪くないの!」

「知ってる!てか怒ってねえし!いいかげん黙れ」

ぴしゃっと言われて、しゅんとなる。

「怒ってんじゃん……」

マサヤンは俺より少し先を自転車を押しながらしゃんしゃん進む。徒歩通の俺はとぼとぼ歩く。

どうにか機嫌直してくれないかなあ。

ちょっと足を速めて、自転車の荷台を掴んだ。

「おい、なにすんだよ」

振り返ったマサヤンを抱きしめようとすると、自転車を持たないほうの腕で全力で拒否された。

「お前、ばかにすんなよ!」

低い位置にある目が、キッと俺を睨んだ。

「お前が山ちゃんとどんなバカしようが、妙な女どもに騒がれようが、こっちはなんとも思わねえし、勝手にやってろ。だけど…」

マサヤンは急に視線を横にそらした。

「仮にも俺の恋人を名乗っていたいなら…、もうちょっと、考えて行動しろ。そうじゃないと……」

「そうじゃないと?」

問い返すと、マサヤンはああもう、と叫んでくるっと背中を向けた。

「いいんだよ!とにかくそういうこと!わかったな!」

「えー!」

最後まで言ってよ!と食いついてみるけど、実はもう充分だったりする。

たかがあんなアホなことでいろいろ想像してしまって嫉妬してしまうマサヤン。
それが恥ずかしくて素直になれないマサヤン。

こんなに嬉しいことはないけど、俺がマサヤンの気分を害したことに変わりはないから、

「マサヤン!」

走ってマサヤンの前方に回りこんで。

「本当にごめんなさい!これからは気をつけるから!」

しっかり告げて頭を下げた。そしたらマサヤンは「おいなんだよ恥ずかしいからやめろ!」と叫んでいたけど。

「……もういいから。顔、上げろよ」

ため息混じりに言われて顔を上げると、マサヤンは片手でがりがりと頭をかいた。

「俺も、悪かったよ。へそ曲げてた」

たかがマヨネーズに。

やれやれ、俺もどうかしてるな、と、マサヤンは笑った。

ああああもう!不意打ちキタ!
いきなりレア物の笑顔は反則でしょう松永さん!

雷に打たれたように動かなくなった俺を見て、マサヤンはさらにくつくつと笑った。

「なんだよお前、すげーアホ面!」

好きな子の笑顔を見たら、誰だって惚けてしまいますよ。

まあ、とにもかくにも機嫌を直してくれたマサヤンの横に並んで、また帰り道をゆっくり歩いていく。

いつかきっと、マサヤン本人にマヨネーズじゃないものをぶっかけたいなんて、不純な考えは起こらなかった。





……、全然って言ったら嘘になるけど。

→おまけ
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