捧げ物

□○日本男児なら腰の低いたをやかな撫子を愛せ!
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おまけ(つづき)の本雅








「マサやん!」

後ろからアイツの声がした。

なんで俺が屋上にいるなんてことがわかるんだよ。てか、今さら何なんだよ。

「マサやん、こんなとこにいた…」

一生懸命追いかけてきたみたいに、荒い息をしてさ、ムカつくんだよ!

ムカつく、ムカつく!

追いかけてきてくれることが、嬉しすぎてムカつく。

「マサやん、あのさ…」
「うるさい黙れ」

今さらなんだって言うんだよ、バカ野郎。聞いてやったりしねえからな。

「マサやん…」

アイツは困ったように呟いた。

そうだ、もっともっと困ればいいんだ。

俺のことでもっと頭いっぱいになればいいんだ。

俺を無視したりできなくなればいいんだ。

「マサやん、ごめん」

振り向きもしない俺に、アイツは勝手に謝り始めた。

「冷たい態度とって、ごめん」

ムカつくんだよ。

「黙れっつってんだろ!」

謝ってくれて、嬉しい。
翻弄されてて、悔しい。

「……どうして…あんなふうにしたんだよ」

凄くびっくりして、焦って、苦しくて、悲しくて、寂しくて。

背後の男は、少しだけ声を落として話しはじめた。

「…マサやんが、俺のこと好きじゃないのかと思って」
「は?」
「いつもいつも、何をしても冷たいし、ぶっきらぼうだし…」

少しだけ、間があって。

「好きって言ってくれないから」

えっ……

「そりゃ、マサやんがツンデレってのはわかってるし、そういうマサやんならではの所が、やっぱりすごい好きなわけなんだけどさ」

ツンデレという言葉に、突っ込みを入れる雰囲気ではない。

「情けないけど、俺、完璧じゃないから、やっぱり不安になっちゃうんだよね。だからさ」

マサやんがいつも俺に対してとってる態度を、今度は俺がしてみたわけ。

その言葉は、ずいぶん近くで聞こえたかと思うと、ふわりと抱きしめられた。

ふりほどく気に、なれない。

「寂しい思いさせて、ごめんね」

心から謝ってるのがわかる。

俺がいつもしている態度って、こんなに寂しい気持ちにしてしまうもんなんだ…

「裕史…」

体を包む腕に手を添える。

「俺の方こそ…ごめんな」

だって、なかなかコイツみたいに好きなんて言えない。恥ずかしいし、俺ってそんなキャラじゃないし、好きなんて何度も言えば、薄くなっちゃう気もするし。

だけど、それじゃダメなときだってあるんだ。

「裕史……」

緩く抱きしめられた腕の中で、俺は方向転換して裕史に向かい合う。

「好きだから…」

大好きだから、もうこんなことしないでくれ。

目を見て言うと、頬が火照ってくるのがわかる。

裕史の目が驚いたように見開かれ、その後、ふっと細められた。

キス、されるな。

俺はどぎまぎして、緊張してしまう。

映画とかドラマとかマンガとか、長いこと付き合ってる恋人って、慣れたみたいにチュッチュチュッチュキスしてるみたいだけど、俺はやっぱり慣れなくて。

ドキドキして、体が固くなる。
あいつは背の低い俺の顎を上向かせた後、そのまま耳たぶを擽る。
くすぐったいのが、心地いい。
心地よさに狼狽えていると、今度は髪を撫でられて。
安心する。すごく。
すごく、愛おしくなる。

目を、閉じた。

ゆっくり、唇が塞がれた。


と。

「……?」

キスはキスなんだけど…

なんだ?この懐かしいような甘い味は…?

裕史の舌を招き入れながらぼんやり考えていると、

「あ、前チンの芋けんぴの味する」

アホがのんびり呟いた。

裕史にされるキスは俺にとっちゃむちゃくちゃ恥ずかしい行為で、かなり雰囲気が整わないと出来ないというのに…!

それを、芋けんぴ………!

バチコーン★★★

「痛あっ!マサやん、何すんの!!」

やっぱり、俺は大和撫子みたいにはなれないようだ。
そりゃあ、そうだ。
俺はますらをぶりの日本男児なんだから!








おわり!


てか、二人とも、授業は?


→あとがき
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