頂きもの文

□うまく言えないから
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「どうしたんだ?突然…」

約束もなかったのに、清木は突然俺の屋敷に現れた。
何か話があるのだろう、と思い部屋にあげたが、口を閉ざしたままで。
俺が何を尋ねようと、返事すらしてくれない。

さて、どうしたものか……と思案していると、不意に清木が俺の胸元に顔を埋めるように寄りかかってきた。


「何かあったのか?」
「…うるさい、黙れ」

清木の顔は見えないので表情まではわからないが、その身体は微かに震えていた。

俺はその震えを止めようと、清木を抱き締めようとしたが……。

「触るな」
など言って、撥ねつけられてしまった。
だいたい、自分からくっついてきておきながら触るな、とは……。
本当に扱いにくい。そこが可愛いんだが。


「泣いてるのか?」
「そんなはずないだろう」
「じゃあ、泣きたいのか?」
「うるさい、黙れ」
「それとも………抱いてほしいのか?」
「っ!戯れ言を…」


下らないことを言いあいながら、俺は清木を優しく抱き締めた。
清木はと言うと、やめろ、だの、離せ、だの言って怒っていたが、それほど抵抗はしなかった。


「辛いのか?」
「お主には関係ない」
「関係なくない。俺は清木が辛そうなのを見るのは嫌なんだよ」
「……何も、知らないくせに」
「あぁ、何も知らない。でも、何かできることはないか?清木のために、何かしたい」
「…どうして?」
「好きだから」

再び清木は押し黙ってしまう。

でも、もうこの突然の来訪の粗方の理由はわかっていた。

何が原因かは知らないが、俺にすがりついてきてくれているのだ。
撥ねつけるような言葉は照れ隠しなのだろう。


本当に…甘えてくるなら、もっと素直にやればいいのに。


「清木。俺にどうしてほしいんだ?」
「……………このまま、こうしててくれないか?」
そう言いながら顔をあげる清木。その目には涙が溜まっていて。

「鰐淵と、いると……安心、するから…」

ようやく素直になってくれた。


「わかった。ずっといてやるからな」
笑顔でそう言ってやると、少しだけ、清木の表情も和らいだ。


何が清木をここまで追い詰めているのか。


正確なところはわからない。


けれど、清木が俺といることで、少しでも気が安らぐなら………ずっと一緒にいてやろう。

いてやるから………いつでも俺を頼って来てくれよ。

どんなときでも、必ず清左衛門のこと、受け止めてやるからな。



そう心に誓いながら、そっと清木の頭を撫でてやった。




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