未来部屋

□黒ネコと不幸と幸せと
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黄昏時も過ぎ、すっかり暗くなった路地裏を一人の青年が歩いていた。

(遅くなっちゃったな)

そう思いながらも、青年は急いで歩くこともしないで呑気に今日の夕飯はどうしようか、などと思考を巡らせていた。

その時、彼の前を黒ネコがゆっくりと横切った。
黒ネコは輝く黄色い瞳で青年をチラリと見たが、そのまま暗い路地のどこかに姿を消した。

優雅に歩き去った見るからに品の良さげな黒ネコは、どこか知り合いの少年に似ていると青年は思った。

青年はやれやれと一つため息をつく。
昔から黒ネコが前を横切るのは不吉だという。
普通なら気にすることでもないただの迷信だが、彼は自他共に認める不運な男だった。
また良くないことが起こるのか…そう思うと気分もだんだん沈んでいった。

(例えば過去に呼ばれて赤ん坊にコテンパンにやられたり
レディから『おいしい』料理を食べさせられたり)

嫌な考えを振り払い、なるべく早く帰ろうと急ぎ足になったとき、街頭の少ないこの裏道を照らしていた月が雲に隠れた。
その瞬間。

ガガガガガガガガ

凄まじい銃撃音に静寂が破られた。

「うっわぁぁぁあ!!!!」

青年は突然の襲撃に頭を抱えて道路に伏せた。
彼の頭上にはたくさんの鉛玉が飛び交い、男たちの怒号が響く。

(いやいやこんなとこで銃撃戦やるなよ!)

青年はほふく前進で道の隅へ避難し、小さな鉄の箱の影に隠れた。

ズガガガガガガ

尚も激しい銃撃戦は続き、止む気配はいっこうにない。

(ああ、オレなんか悪いことしたかな)

青年は今日1日を振り返った。
朝からアジトの掃除をして(トイレで転んだ)
昼にはボンゴレに届けものをして(獄寺氏にからかわれた)
帰りに買い物して(お財布忘れて一度家に戻った)
今(銃撃戦に巻き込まれる)に至る。

こんなに悪いことばかりなんだから、なにかひとつくらいいいことがあってもいいじゃないか。
青年はガックリと肩を落とし、膝を抱えて丸くなった。


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