自分的青春論。
□第二話
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体中が痛い。
痛い。痛い痛い痛い……いや、真面目に痛い。
骨、痛い。
折れてる?折れてるよねコレ、あ、でも折れてないな。ってなんなんだ私。
頭のなかがパニックになりかけた時、ザリッ、と腕に不思議な感触。
これは――そうだ、校庭で派手に転んだ時の……砂?
ゆっくりと、目を開ける。
視界いっぱいの、草。
「な、に? ……どこ?」
地面に手をついて、体を起こす。
お腹とか、足とかいろんな場所が痛い。
今居る場所……悪くて道に放置、良くて病院のベッド、ぐらいだと思ったのにな。
まさかの野原ですよ。予想外すぎるんだけど。
しかも、ふともも辺りまで延びている背の高い草が一面に広がっている。どこの山だよ。
「――、ぬ?」
私は、感覚が鋭いとは決していえない。
でも……小さい頃から、何故か悪意のある視線には敏感だった。
――見られている。
骨が、きしむ。
肌を、生暖かい風が撫でる。
何もないのに、動けない。
――これを見えない恐怖、とでも言うのかな。
怒りを堪える時のように震える体も、刺されているかのように痛む心臓も、私のものじゃないような気さえしてきた。
強い風が吹き抜けた。
「………っ!?」
首にあたる、冷たく硬い何か。
右肩に、重み。そして、ぐりぐりと不自然な痛み。これは……手?
こめかみの辺りから顎に向かって、汗がすうっと流れる。
「――誰だ」
頭の後ろで、声がした。
短すぎるその言葉が、私に向けられているのだ、と気付いたのは、
「聞いているのか? お前は何者だ。何故ここに居る」
首にあてられたものが、ぐり、と押しつけられた時だった。
ちらりと斜め下を見ると、黒い腕……服が見える。
――学ラン? 男、か
「っ!?」
右肩に置かれた手に、思いきり爪をたてる。
右肩の手が緩んだ瞬間、首にピリッと痛みが走った。
首の所にある腕を両手で掴み、首から引きはがす。
そのまま、一本背負いをキメた。
首が、ぴりぴりと痛む。
踏ん張った事で、更に足が痛くなった。
だけど、その時は痛みよりも怒りの方が勝っていた。
「いくらなんでもやりすぎ、だっ!」
男の、上半身が起き上がった所で
(私が居る位置からは、草のせいでニット帽を被った頭しか見えないのだけれど)
ムエタイ風に(つまりがに股)全力でその頭を蹴り飛ばしてやった。
草が折れる音、地面を何かが滑る音。男は、私の手によって再び地面に伏した。
一カ所だけ、草が消える。そこに男は横たわっていて。
「立場逆転、だね」
うつぶせで倒れている男の背中に飛び乗り、腕をひねり上げる。