+ くらっぷ +

□第4弾 ドラコ
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「クシュンッ、クシュッ、クシュンッ!」

連続して聞こえてきたくしゃみに、後ろを振り返った。

「風邪?」

真後ろの席にいたマルフォイは、まさか振り返られるとは思っていなかったらしく。
目が合った瞬間、口元に当てていた、こぶしに握った手を慌てて離した。
やや赤らんだ顔は、風邪の時のそれのように見えたけれど。

「…あ、いや」

しどろもどろで、なんとも歯切れが悪く、本当に風邪をわずかに疑ったが。
懸命に首を横に振っているところを見ると、どうやら違うようだ。
本人が何ともないと言うのだから、と。

「そお?じゃあ、誰かがウワサでもしてるのかもね」

そう何気なく口にして、前に向き直ろうとすれば、怪訝そうな顔で呼び止められる。

「なんだ、それは」

「え?あぁ、ただの迷信」

きっと彼の事だから、さらりと流されるかと思ったのに。
わざわざ聞き返されて、ちょっと驚いたけれど。

「くしゃみを続けて何回したかによって、言われてることがあるの」

ますます顔を顰めて、けれどその先を聞きたそうな様子に、話しを続ける。

「そう。1回なら良い噂、2回なら悪い噂ね。4回以上は単なる風邪」

回数毎に指を一本ずつ立てて増やしながら、ひとつ飛ばして、指を4本立てた。
そうすれば、当然。

「3回は?」

わざと飛ばした3回目を、聞いてくる。
上げていた手を下ろしながら、小さく笑みを作ってみせて。

「2回より、もっと悪い噂、されてるかもね」

彼の場合、あながち外れてもいないと思ったけれど、その答えは気に入らなかったらしい。

「ふん、くだらない」

期待して損をした、とばかりに、鼻で笑って一蹴される。
そんなマルフォイの態度に、やっぱり彼らしい、と思いながら。

「まあ、3回には他にも、誰かに好かれてるっていうのもあるけど」

その後に、単なる迷信だけどね、と続けようとしたけれど。

「なっ…!」

短く声を上げ、驚き過ぎではないかと思うほど、身体を硬直させて。
先程の比じゃないくらい、かぁっと瞬時に、顔を真っ赤に染めた。
さすがに大丈夫だろうかと、心配で声を掛けようかと思った時。
扉の大きな音をさせて、始業時間開始と共に現れた教師に、ちらりと睨まれて。
さっと素早く前を向いて、姿勢を正して座り直した。
少しだけ、後ろが気掛かりではあったけれど、目の前に教師に立たれて、振りむけないまま。
なんとなく、緊張した気配を背中に感じながら、教科書を開いた。



...End... (2010/08/17)


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