+ くらっぷ +

□第2弾 オリヴィエ
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育成に関する資料を抱えて、宮殿の廊下を歩いていると、今まさに通り過ぎた執務室の扉が、バンッと勢いよく開いた。
何事かと振り返ればそこはオリヴィエの部屋だったようで、扉を押し開いた手はそのままに、仁王立ちしている。

「ゼフェル見なかった?」

「え…、庭園にいたけど」

「案内して!」

そう言ってこちらにずかずかと歩み寄ると、むんずと腕を掴まれた。
強引に連れていかれそうになり、そうはいくかと踏ん張って踏み止まる。
こっちだってこれから育成のお願いやらで忙しいのだから、そうそう付き合っている暇はない。

「何かあったの?」

「あんのお子様は、人がいない隙に勝手に持ち出したんだよ!」

ゼフェルがどんな物を持ち出したのか、聞きたいのが半分、聞かずにおきたいのが半分。
とは言え、あっそう、とこの場から立ち去れる見込みもなさそうで、一応聞いておく事にする。

「一体、何を」

「ジュリアスに見付かれば厄介な物」

詳しく物の正体まで聞かずとも、光の守護聖に知られてはならない物となれば。

「それは、まずい、ね」

規律を重んじ、自らにも厳しいあの人の事だ。
そうそう簡単な罰では済まされないだろう。

「だからさっさと取り返しに行くの」

見付かる前にね、と無理矢理引っ張って走り出した。
そこに何故自分も巻き込まれなくてはならないのかは分からないが、今更振り切って逃げれる程、自分には腕力は無い。
前を行くのは、化粧をして巻きスカートにピンヒールという格好をしていたとしても、性別は男性。

それに、お付き合い真っ最中の恋人、だったり。

大理石の床に響くカッカッという音が耳に付く。
普段でさえハイヒールのカツカツという音が高い天井に反響するのに、今は全速で駆け抜けているのだから相当なものだ。
ゼフェルからバレる前に、廊下は走るな、と咎められそうだった。

とりあえず、一応付いては行ってみるものの。
ゼフェルが持ち出した、厄介な物、よりも。
あの高さのヒールで、なぜ全速力で走れるのか、という事の方が、気になって仕方がなかった。



...End... (2009/12/06)


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