+ くらっぷ +

□第2弾 ドラコ
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土曜日の夕方、ホグズミートからの帰り道の事。
この貴重な外出は、邪魔が入る事なく、二人っきりでのデートが出来るものだった。
だから今日は、いつもより少しだけ、遅くまで居ただけのつもりだったのに。
気がつけば、思ったよりも二人で過ごす時間が楽しかったようで。

「ちょっと、急いでってば!」

「分かってるって」

門限となる時刻まで、残された時間はほんの少ししかなかった。
急ぐ事をあまりしない気質なのか、自然早足になるこちらを後目に、ドラコはややのんびりモード。
スリザリン寮の彼はそれでも良いかもしれないが、門番としているであろうフィルチ。
もしくは、こんな時にこそタイミング良く居るであろうスネイプに、減点を言い渡されるのはグリフィンドール寮の自分だ。

「もう、置いてくからね」

いい加減しびれを切らしてそう告げると、さすがに少し慌てたのか二人の間に空いていた間隔が縮まった。
出来るんじゃないの、と内心呆れて、はたと思い付いた。

「そうだ、ここから競争しない?」

「は?」

我ながら良い案だと思ったのだが、彼はそうは思わなかったらしい。
しっかり疑問符で返されてしまったけれど、こちらは端から返事を待つつもりなんてない。

「ゴールは校門ね」

勝手に言い置いて、彼にくるりと背を向ける。

「おい!」

「用意、スタート!」

少々のフライングだが、スタートのトが言い終わる前に早くも走り出した。

「待てって!」

「待つわけないでしょ!」

全力疾走、とまではいかないまでも、追いつかれてなるものかと息を弾ませて校門を目指す。
やや息が上がりながらも、彼よりは幾らか余裕がある。
何せ自慢じゃないが、逃げ足は速い方。
軽やかに駆けていく少し後ろを、必死で追い掛けてくる足音がする。

「…、やった…っ!」

門に手を掛けて、時間ぴったりに閉める準備万端なフィルチの横を、勢い良く走り抜けた。
僅かに遅れて、ドラコも続いて門を潜る。
直後、がっちゃん、との音も甚だしく、重い扉は隙間なくきっちりと閉じられた。

「ぎりぎりっ、セーフ…」

膝に手を付いて、はあはあと大きく肩で息をしながら、呼吸を整える。
暑い季節も終わったというのに、しっとりと汗ばみ、額や首に張り付いた髪をかき上げた。
片やドラコは、しゃべるどころか息をするのもままならないらしく、がっくりと項垂れてしゃがみ込む。

「…お前、な」

「閉め出しだけは、免れたでしょ」

それを足元に見ながら、腰に手を当てて、うーん、と背を伸ばした。
そして、まだまだ回復し切れていないドラコに向かって、少々冷たい一言。

「ほら、大広間までもうひと踏ん張り」

「なっ」

疲弊と驚きの表情で見上げてくるが、残念な事に、いちいち構ってる暇はない。

「夕食の時間、忘れてる?」

三本の箒でお茶もしたし、それ程お腹が空いている訳ではないけれど、訳もなく夕食の席に出ないとなると、目をつけられかねない。 
ただでさえ、今現在、フィルチに睨まれているのに。
無理矢理に腕を引いて引っ張り起こして、嫌々歩くドラコの背中を後ろから押して歩いた。
自分より体力のない恋人、というのはいかがなものか。

変なところで、自分が必死にあらがっても、放してくれない程の力強さはあるのに。

とは言え、今後のためにも体力をつけてもらうべく。
そのためにも、先ずはきっちりと夕食を摂ってもらうために、背中を押す手に力を込めるのだった。


...End... (2009/12/06)


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