【MaiN WorlD】

□Please your smile
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「失礼します」

「アスラン?どうしたの…まぁ入りなさい」

アスランは艦長室に来ていた。

「…お願いがあります」

神妙な面持ちでアスランは話し出す…。





ピーピーピー

緊急事態を知らせるときの音が、アークエンジェル艦内に響き渡る。

「何でしょう?」

「秘匿通信のようだが…誰なんだ?ブリッジに行ってみるか」

「うん」

先程まで艦内の温泉『天使湯』に入っていたラクス、カガリ、キラはブリッジに足を向けた。

(もしかして…アスラン?)

キラは少し足を止め、考えた。

(そういえばアスランには教えてなかったな…ここの通信方法)

「何やってるんだ?早く行くぞ!」

隣にキラが居ないことに気付いたカガリは、振り返り声をかけた。俯いていたキラは顔を上げる。

「あっ、ごめん!」

「別に謝らなくても良いのですよ?」

クスクス笑うラクスに、キラは照れるように笑った。



「艦長、誰からの通信なんだ?」

ブリッジに着いて早々、カガリは話を切り出した。

「カガリさん、ラクスさんにキラ君も。それがミリアリアさんからの通信、何だけど…」

艦長マリュー・ラミアスは困った表情を浮かべる。

「何だけど?」

カガリは聞き返す。

「暗文なんだよ、前半は分かるんだが後半はさっぱりだ」

アンドリュー・バルトフェルドが首を傾げてその暗号文を見遣る。

『ダーダネルスで天使を見ました。また会いたい…あかのナイトが従者を連れて姫を探しています。どうか連絡を ミリアリア』


「あかのナイト?」

ラクスも首を傾げる。紅赤朱…今の所、あかで連想される人物は一人しかいない。

「…アスラン?」

キラはその名を呟く。会いたいような会いたくないような…複雑な表情を浮かべて。きっと彼は怒るだろう。自分の知らないところでキラが戦闘に出たことを。キラは苦笑する。

「あいつ、しかいないだろうな。でも従者って…?」

カガリは首を傾げた。従者…、どういう事だろう。これがナイトと掛けた比喩である事は明白だが、今の彼に随行員なる者がいるだろうか。彼は『オーブのアレックス・ディノ』。アスハ代表の随員。それ以下でも、それ以上でもない。彼はもう、『ザフトのアスラン・ザラ』でも『プラント最高評議会議長の子息』でもないのだから。

「会いましょう…従者が誰だとかは、会えばわかります。それにアスランが戻ったのなら、プラントの事も色々とわかるでしょう」

キラの言葉にバルトフェルドは顔をしかめ、うーんと唸る。

「…でもアークエンジェルは動かないで下さい。僕が一人で行きます」

「え?」

後半部分のキラの提案に、ラクスは不安を覚え声を上げた。キラはその不安な思いを汲み取って笑顔を向ける。

「大丈夫、心配しないで?」

不安が無いなんて言ったら嘘になる。あかのナイトがアスランでも、そうでなくても…。

「私は一緒に行くぞ!」

「え?」

思いも寄らぬカガリの言葉に瞠目するキラ。そんな彼女をカガリは慈愛を帯びた目で見つめる。

「…全てを独りで背負い込もうとするな!じゃないと今に潰れるぞ?私…いや、周りにも背負わせて良いんだ」

カガリはキラの頭をグシャグシャと掻き乱す。一国を背負っている彼女から見ても、キラは無理をしている事がわかる。いや、彼女だからこそわかるのかもしれない。

「うん…じゃあカガリも」

キラはカガリの気遣いに泣きそうになるのを必死で抑え、微笑んだ。

「なにやら少し寂しいですわ。わたくしも行きたいのですが…」

二人のやり取りを見ていて、ラクスは本当に寂しそうに呟く。だが命を狙われている手前、軽々しく出歩く事等出来ない事を彼女は重々承知していた。

「今回は止めておきますわ。カガリさん、わたくしの念いも彼に伝えてくださいな?どんな方法でも構いませんので」

ちょっぴりダークなオーラを醸し出すラクスの気持ちが、以心伝心の様にカガリに伝わる。

「あぁ!必ず伝える!!」

二人の言葉足らずなやり取りに、“?”マークを飛ばしながらキラは小首を傾げていた。



.第三話 END
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