【MaiN WorlD】
□Please your smile
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『フリーダム…?キラ・・!?』
アスランが通信越しに叫ぶその名は、先日聞いた彼の愛しい人。
「はぁ?!」
シンには全く意味がわからなかった。あの機体は伝説の機体ZGNFX10Aフリーダム。それに向けて発せられたのは、あの可憐な少女の名。
確かアスランは、前大戦時にフリーダムと共闘したらしい。恋人の名前を付けるほど、愛着でも湧いたのだろうか。
「アスラン!どういう事ですか?!機体に名前でも…うわぁっ!」
色々考えていたシンは、目の前にフリーダムが迫っていることに気付かなかった。慌てて応戦しようとすると、フリーダムは目にも止まらぬ速さでインパルスの腕を切り落とす。余りにも速いので、カウンターもくらわせることが出来なかった。先程の名前事件(?)ですっかり忘れていた怒りに、再び火が灯る。オーブといいアスハといい、全てに於いてシンを苛立たせる。だいたいフリーダムにだって良いイメージは持っていない。
「あぁもう!くそっ!!」
シンは、既に遠くで戦っているフリーダムを睨み付けた。
(なんでっ…なんで、前大戦の救世主がこんな所にいるんだよ!なんで邪魔するんだ)
シンの中で疑問が勝手に解釈され、それが怒りへ変わるのに、そう時間はかからなかった。
「うそっ?!」
フリーダムに近付くオレンジの機体が空中で爆散する。キラは驚きを隠せない。彼女はまだその機体に対しては攻撃を加えていなかったからだ。幸い急所からは外れていたが、パイロットはそれなりの傷を負っていることだろう。キラはそんなパイロットをほおっておけず、慌ててつかみ掛かる。良いのか悪いのか…パイロットは気を失っているようだ。抵抗されずにアークエンジェルに戻れた。途中このオレンジの機体に損傷を与えた黒いMAが襲って来たが、構う事なく進む。
今大切なのは戦闘ではなく、人命なのだ…と。
「ハイネェーッ!…キラ!?何処に…?キラ、キラァッ!……くそっ、繋がれよっ!」
アスランはどんっと、コックピットの画面を叩く。ピシッとヒビが入った。
(何が守る、だ…。キラを戦闘に出してしまっては意味がないだろ…?…何で出て来たんだよ?キラ!)
歯を食いしばって眉をひそめるアスラン。
母艦より帰還信号が上がり、アスランは振り切るように頭を振り帰路に着いた。
*******
「何なんだよ!あのアークエンジェルって艦も、フリーダムも!…アスラン!!」
ミネルバの格納庫で、シンは憤慨した様子でアスランに詰め寄る。アスランはそれを少し面倒そうに見ていた。
「あれにアスランの知り合いが乗ってるんですよね!?なんであんな意味無い介入するんですか!ハイネも…」
「ハイネに危害が加わることはまず無いだろう、そこは心配するな。捕虜になることも無い」
信用し切った声で、アスランは答えた。シンは怪訝そうな顔でそんな彼を見る。
「よく信じられますね…?あんな意味のわからない国から出て来て、意味のわからない行動をする艦を」
アスランは肩を竦め、溜め息をついた。その態度がシンを苛立たせたが、ふと思い出したように問う。
「…アスランは機体に名前を付けてるんですか?キラッて…あんたの恋人ですよね」
アスランは瞠目すると苦々しげに俯いた(ちなみに近くにいたルナマリアも驚いている)
「…キラは………フリーダムのパイロットだよ」
アスランは拳を握り締めていた。違うかもしれない…何て微塵も思えなかった。あの動きは、あんな動きが出来るのはキラしかいない。何よりアークエンジェルやカガリと共に居たことが何よりの証拠だ。シンは唖然と息を飲む。
「あの…人が?」
オーブでの、あの日の事がフラッシュバックする。今にも消えてしまいそうな程か細く、儚い印象さえ持たせるあの少女。
「シン、知ってるの?」
今まで黙っていたルナマリアの発言をスルーするシン。
「そんなっ…あの人があれのパイロットなんてっ!信じられない!」
自分達ザフトレッドよりモビルスーツを乗りこなしているのが、唯の民間人だとは思いたくは無かった。
「あれは頭で動かすモノだ、人を見た目で判断すると痛い目に合うぞ」
興味なさそうにそっぽを向いていたレイが、フリーダムの名前を聞いた途端話に入って来た。シンはレイに振り返る。
「何だよ、レイ…」
「事実を言ったまでだ。シン、お前は少し自分を過信している。確かにお前は日を追う毎に力を増して来ているが、まだ完全じゃない」
シンをはじめ、周りの者は疑問符を惜し気もなく飛ばしている。
「レイ?何言って…」
「お前はまだ強くなれる、と言うことだ」
レイはそう言うと踵を返してミネルバ艦内に消えていった。アスラン、シン、ルナマリアはレイの背中を見つめる。
「…ふぅ。こんなところで話していても埒があかないな、話は後だ」
アスランもその変な空気から逃れようと歩き出した。
「ちょっ!待ってくださいよ、アスランには婚約者がいるのに彼女までいるんですか!?良いご身分ですね」
ルナマリアの妙な刺々しさは、ディオキアの一件から来ていることは安易に想像できたが、アスランは敢えて無視して進む。このまま相手にしても、聞き入れてくれないのは前回学習済みだ。
「そーいや、オーブでラクス・クラインも見た気がする…」
シンはボソッと呟くと、怒ってアスランに詰め寄ろうとしているルナマリアの後について行くように歩き出した。
.第二話 END