treasure

□「   」
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「  」


今日は会えるって、今日は一緒に居れるって言ってたのに。彼、沢田綱吉は仕事の都合で会えないって言われた。滅多に会えないから、お洋服も新しいの買って、部屋も掃除して、お昼ごはんも腕を奮って作った。なのに、電話一本でぶち壊し。会社関係でって言ってるけど、最近そればっかで、その言葉が全部嘘みたいに思えてくる(そう思ってる自分が嫌になる)。「ごめん、急いでるから!」との声とともに電話が切れた途端、それを合図に私の体はうつ伏せにソファに身を投げる。わかってた。こんな風に会えなくなるってことは。でも、今日くらいは、私の誕生日には会えるって信じてた。だから、こんなに楽しみにしていたのに、こんなあっさり、と…。今まで溜めていた事を心の中で叫んでいると視界がにじんできた。ああ最悪。こんなくらいで泣くなんて寂しがり屋みたい。涙なんて止まれ止まれ止まれ!

「なんで泣いてるの?」

その声を聞いた瞬間、ぶわりと涙が浮かぶ。ああ、彼は人を驚かすのが好きらしい(あの急ぎぶりは嘘みたいだ)。

「う、うるさい!泣いてないから!」

勢いをつけ上半身を起こすと後頭部に激しい痛みが走った。さきほどの電話の相手に思い切り頭をぶつけたのだ。

「いたたた!いきなり起きるからびっくりしたよ!」
「それはこっちの台詞!いきなり家に入ってくるからびっくりしたじゃん!」
「ごめんごめん。ちょっと驚かせようかなーって思ってさ」

思ってさじゃない!と言おうとするとぎゅ、と抱きしめられた。こうやって抱きしめられると、綱吉の温かさにどこか父性を感じてしまって、さきほどまで溜め込んでいた言葉を殺してしまう。優しさに包まれている感覚が胸に広がる。

「ごめん、驚かせて」
「うん。こんどこんな事したらリボーンさんと仲良くする」
「えっ!?」
「うん、嘘」

あはは、と二人で笑う。しばらく経って綱吉がポケットから何かを取り出した。紺色の小さな箱に入っていた物を私の左手の薬指にそれを嵌めた。きらりと光るそれを見つめていると、綱吉は手の甲にキスを一つし、こう言った。




「   」
(次はいつ会えるの?)(んー…一ヶ月先かな)(うそ!?)(うん、嘘)(…)



†後書き
柚子さんから、フリーだったものをいただいてきました♪
か く し あ じさんから。ありがとうございます♪

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