novel

□戻れない
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「さやかちゃん、?」


外が暗くなるのに気付かず図書室で勉強をしてしまい、慌てて帰ろうと荷物をまとめると後ろから声をかけられた


聞きたくなかったけど、ずっと聞きたかった声

会いたくなかったけど、ずっと会いたかった。


「…ゆーり」

「やっぱりさやかちゃんだ」

「学校来てたんや」

「いつも休んでるわけじゃないよ」


付き合っとる時はいつも休んどったやん。なんて言いそうになったけどあの頃のことを思い出すのも嫌になる

でも、消したい過去ではない


話すのをやめて荷物をまとめてゆーりから逃げるように学校を出た


「さやかちゃん」

「誰が見とるかわからんから話しかけんといて」

「こんな時間に外に出てる人なんかいないよ」

「家こっちやないやん」

「さやかちゃんと話したいから」


またそんなこと言うて…

あんなことしたくせに。


「わかった、もう話しかけないからこれだけ聞いて」

「なに?」

「また私と関係を戻しませんか?」


危うく手が出そうになった

この子は自分が何したか覚えてないん?


「ゆーりがそういうやつって知っとるから、あの頃にはもう戻れへん。」


ゆーりがどんな気持ちで言ってきたのかわからへんけど、あんなことされてよりを戻す人がおるわけないやろ


「あのことは本当に後悔してます
あの子とは1回遊んだだけだったけど、それをたまたま見られたんです」


1回遊んだだけだったとしても浮気は浮気やし、ゆーりの1回って言葉は信じられへん。


「…最後にキスしたい。」

「いやや」

「もう話しかけないから」


下を向いたゆーりはぎゅっと手を握って言ってきた


「わかった」


ゆーりの手が伸びてきて、唇が触れたかもわからへんくらい軽いキス


「さようなら。今でもさやかちゃんだけを愛してます。」


ゆーりのこぼした言葉はあたしには聞こえへんかった。


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