鳳長太郎(腐)

□あなたのように
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「ったくめんどくせぇ。なんで俺なんだよ。跡部の野郎、何考えてんだ」 
今日は氷帝学園の幼・中・高・大交流会。じゃんけんに負けたボクと宍戸先輩は、テニス部代表として参加することになった。
隣の席の宍戸先輩はさっきから髪を弄りながら、ブツブツ言っている。
そりゃボクもこういう場は緊張するから苦手だけど…

「おい、そこのチビ!」
突然向かいの席の大学生に指を差された。
「っひゃい!」
「お前から自己紹介しろ」
「はい、えっと中等部1年の鳳長太郎です…」 
「声がちっせぇんだよオラ」
…怖い。やっぱりボクも来たくなかった。悔しくて悲しくてうつむいたその時だった。
「今の言葉取消せや、オッサン」
はっと横を見ると宍戸先輩が大学生を睨んでいた。
「なんだこのガキ!」
大学生が声を張り上げたので周りがざわつく。
騒ぎに気づいたら壇上の跡部先輩が指を鳴らすと、樺地が大学生を会場からつまみ出した。

ほっと一息つくボクを見て、宍戸先輩は「お前ももっと堂々としてろよな、そんなんだからナメられんだよ」と厳しく言い放った。
「でもボク緊張するし、堂々とできるほど自信もないです…宍戸先輩と違って」
はっと口を抑える。最後のは無意識に出てきた言葉だったから。
宍戸先輩は困ったように笑った。
「ばーか、逆なんだよ。嘘でも堂々としてたら、勝手に自信もつくんだよ」
そう言って俺の背中を叩く。
「よぉし、まずは自分のこと俺って呼べよ。それから先輩にも堂々と話かけろ。見本見せてやるよ、ついてこい」
「はい、宍戸先輩!」
あれだけ嫌がっていたのに、宍戸先輩はウキウキしてテニス部OBの所へ俺を連れて行く。

帰る頃にはすっかりたくさんの先輩と話せるようになっていた。
「宍戸先輩のお陰で、俺今日は楽しめたっす!ありがとうございまっす」
あ… 
「ばーか、最後のっすはいらねーよ」
落ち込んで、またうつむく俺。
「顔上げろ。」
宍戸先輩がくしゃくしゃと俺の頭を撫でながら、顔を覗き込む。
「朝よりいい顔してんじゃん」
ニカッと笑って宍戸先輩が手を振った。
宍戸先輩のようになりたい。
沈む夕日に俺は誓いを立てた。
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