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□昼下がりの休日
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ほっ、と息をつくと、隣にいた彼が笑った。


「もうくたばったのかよ、歳か?」


ハスキーな愛しい声。
俺の大切な人。


「お前があんまり可愛いから、つい欲張っちゃう」

「黙っとけ、別に俺はお前に抱かれたい訳じゃない」


意地悪な奴だ。もちろんお互いに冗談の範疇を超えないのだが。

顔を見合わせて笑う。
忙しい毎日の、ほんの少しの休息だった。


「お前、俺を抱いてて気持ちいい?」


この台詞は、たまに聞く。
さっきまで笑っていた彼の瞳が、微かに揺れている。
ふとした時の、ふとした不安のようなものが襲うのだろう。
その気持ちは分からなくもない。


「愛しいよ」

彼の碧眼が、美しい。
煌めく金色の髪が、愛しい。

そして何より、彼の全てが愛おしい。


「答えになってねーじゃねーか!」

彼は笑った。心底嬉しそうな、たまらない笑顔。

不意に彼がベットの中で身体を寄り添わせた。
淡い汗の匂いと、彼の体温。
俺のことを無邪気に上目遣いで見つめた。


「俺も」


そう言ったあと、恥ずかしそうに俺から目をそらす。

可愛らしくて、愛おしくて、
浮世離れした幸せな感情が込み上げる。


彼が俺に飛びつこうとしたが、俺も負けじと飛びついて抱きしめようとする。
シーツがぐしゃぐしゃになっても構わず、愛おしくてたまらない。お互いに笑い合って、抱き合って転げ回る。


笑うと見える、綺麗な白い歯列。
キュッと上がる口角は、まだまだ少年を思わせるほどに無邪気だ。
他の誰にも無い魅力を持つ彼。
誰にも代え難い、唯一無二の人。俺の大切な人。


勢いに乗って、もう一度彼の上に覆い被さると、

「くたばったんじゃねーのかよ」

と笑いながら、彼は俺の首に手を回した。

「お前のそういうトコが好き」


彼は言い終わらぬうちに、首を伸ばして俺にキスをした。
触れるだけでも、充分過ぎるほど。愛おしさに深さなど関係ない。


白昼の光が、カーテンに差す。彼の碧い瞳が幸せそうに笑っている。美しい髪が、輝いている。


俺も負けずにキスを返す。

愛しくて愛しくて、
難解な言葉など必要ない。


「love you」



ただ愛しい。



...


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