唐沢(長篇)
□4.
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「は?」
モトハルのその一声で唐沢の発言は特に気にされる事もなく、それぞれ届いた料理を口へ運んだ。
私も何事もなかったかのようにしてグラタンを食べていたけれど、一瞬本当にドキッとした。
からかわれているだけなんだと言い聞かせ、さっきの言葉は気にしない事にした。
それにしてもこのグラタン、本当においしい。
「名前、すげえ美味しそうに食べるよな。」
とモトハルが言う。
美味しいですか?と副会長に聞かれ、すっごく美味しいと答えた。
「だろ?オムライスも美味いぞ。食べるか?」
と会長が自分のオムライスをスプーンに取り、私の口へと差し出してきた。
「会長、これ以上名前さんのことを刺激しないで下さい。」
と副会長が小声で会長に告げるのが聞こえた。
なんで?
と意味がわかっていない様子の会長だったが、
なんでもです。と副会長に言われ、
会長は私の方へと差し出したオムライスを自分の口へと運んだ。
すると次は、
「苗字、ナポリタン美味しいぞ、食べるか?」
と唐沢がナポリタンを差し出してきた。
さっきのお詫びのつもりか?そう思っていると唐沢が
ほら、あーん
と言いフォークで丁寧に巻いたナポリタンを食べさせてくれた。
「え?なんで俺はダメなの?」
会長の声は空調へと消えた。