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□花魁の恋(跡蔵)byつぐ葉
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跡部は自分の仕事に忍足を巻き込んだことを、後悔した。

以前のこと。
父の名代で、ある武家に出向いたところ、忍足に見られてしまった。
それを父に話したところ、
「その者を連れてきなさい」
そう命を受けた。
断れるはずもなく忍足に
「今日家に来い。
断ることは許さん」
告げた。
「別にかまへん。
仕事終わったらお邪魔するわ」
「すまない」
「なんや」
「いや、なんでも」
家に戻ると
「あら、景之介のご友人?
はじめまして、母です」
「母上、友ではなく奉行所の者です」
「景之介が連れてくるなど、珍しいこと。
ゆっくりしていってね」
「母上、父上を呼んできてください」
「わかりました」
母が去ると
「なにから聞けばいいか、わからんわ」
「聞くな」
「せやし、わからん」
「なにがだ」
「俺が呼ばれた理由」
「それは聞いてみなければ、俺もわからない」
「親父さん、怖いん?」
「俺は逆らえないな」
「嫌やなー」
「だから、すまないと言っておく」
そうこう話すうちに父が現れた。
「急に来ていただいてすまない。
景之介の父だ。
単刀直入に言おう。
君は景之介を手伝う気はないか」
「父上、なにを」
「こうなったのは、お前の手落ちではないか」
「だからと言って…」
「では、どうする?」
「それは…」
「あのー、すんません。
話が見えへんのですが」
「すまないね。
景之介は、私の命を受けて奉行所に勤めているのだよ。不穏な動きが起きたら対処できるようにな」
「それで、俺にはなにをさせたいんです?」
「簡単なこと。
景之介とともに動いてほしい」
「もし、嫌だと言ったらどうなります?」
「それは聞かないほうがいい」
「わかりました、やりますわ」
「そうか、給金は弾むよ」
「ほな、失礼しますわ」
「では、また」
「景之介、送ってさしあげろ」
「はい、父上」
家から出ると
「なんで引き受けた?」
「断れん雰囲気やったで」
「そういう問題か、危険が伴う。
解ってるのか」
「聞きたいんやけど、跡部の家はなんなん?」
「幕府の重役とだけ、言っておく」
「そうなん?」
「家を見ただろう。
俺は次男だから、家を継ぐことも出来ない。
兄上はいずれ、家を継ぐ身」
「危険なことは、全部跡部が引き受けてるってことかー」
「仕方のないこと。
忍足、お前は手伝うことはない。
父上には、手伝っていると話しておくから」
「引き受けたんは俺や。
勝手に決めんで」
「命を落とすかもしれない。
それでも構わないとでも言うつもりか」
「それは嫌やけど」
「知った以上、お前だけ危ない橋渡らせられへんやろ」
「勝手にしろ」
「そうするわ」

「また、後悔してるな」
「そんなわけないだろ」
「せやし…」
「引き受けたのはお前で、俺じゃない。
そうなったからには、責任を持て」
「わかってるて、せやから今日も付き合う」
「せいぜい、なにも起きないように祈れ」
「へいへい」
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