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□王と虜囚の方程式(跡蔵)by浅葱
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「なぁ跡部。おまえの玩具、一回でいいから貸してくれへん?」
悪友の忍足が、不意にそんなことを言った。
「……」
しばし考えていた跡部だが、何を思ったか。
「いいぜ。ただし、本気になんなよ」
あいつは危ういからな、と。
白石の美貌を思い出して、跡部はひとりごちた。


斯くして。
「え…?」
やってきた白石は、跡部の言葉を聞いてもあまり動揺したそぶりは見せなかった。
その代わり、なんとも付かない曖昧な笑みを浮かべてうつむいた。
あまりに従順な態度を見せつけられて、忍足は跡部と彼の関係性をまざまざと思い知らされる。
「ほな、一晩借りるで。跡部」
「勝手にしろ」
あくまでも余裕のあるような、興味なさ気な様子で跡部はふたりに背を向ける。
「…白石、ほんまにええんか」
忍足は、らしくもなく気遣わし気に隣の美男子を見やる。
「今更やろ」
そのとき忍足は気がついた。
白石は、自分が跡部から忍足に下げ渡されたのだと思っていることに。
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