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□王と虜囚の方程式(跡蔵)by浅葱
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それから跡部は、三日三晩白石を抱き続けた。
朝も夜も、一ミリたりとも白石を傍から離さなかった。
朝起きてから寝るまで。
さんざん愛して、口説いて。
これでもかと言うほど、可愛がって。
「も、ええやん。俺なんか」
白石は信じがたい跡部の豹変ぶりに、これが夢か現かさえも疑った。
「分かんねェやつだな。俺はおまえが欲しいって言ってんだ」
早くこの手に堕ちてこい。
甘やかな口説き文句が、やけに熱を孕む。
じれったいくらいに自分に自信をなくしている白石に、跡部は一から百まで丹念に自分を植え付ける戦法で。
白石はちゃんと覚えていた。
跡部の好きな言葉。
跡部の好きな仕草。
跡部の嫌いなものや、跡部が喜ぶものさえも。
何一つとして、白石が忘れたものなど無かったから。
「マジで可愛い、おまえ」
あの跡部が、懇願する。
愛を乞うことに不慣れな跡部だから、不器用で真っ直ぐに白石の心の柔らかな部分に突き刺さってくる。


「跡部クン、…好きや」
泣き濡れた寝顔を、跡部は胸が締め付けられる思いで食い入るように見つめた。
寝言を言った白石の、その台詞は。
跡部が喉から手が出るほどに欲していたもので。
「おい、白石」
思わず跡部は白石の肩を揺さぶっていた。
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