Main

□氷帝テニス部の掟(跡忍)byつぐ葉
2ページ/2ページ

「わかりました、忍足と勝負します」
最初に答えたのは跡部だった。
なんでや、動揺したのは俺だけやった。
俺と勝負でしかも、部長の座をかけた真剣勝負なんてなんで受けるんや。
「忍足はどうだ?」
「俺は…」
「逃げたりしねぇよな、忍足」
跡部はさらに煽ってくる。
俺は動揺を悟られまいと眼鏡を押し上げる。
「もちろん、跡部と勝負しますよって。
真剣に」
「二人ともよく言った。
それでこそ、氷帝学園テニス部の部長候補に
ふさわしい。試合は30分後。第1コートだ。
準備しとけ」
「はい」(二人同時に)
俺は部室に戻って、眼鏡を外す。
すぐあとから誰かが入る。
気にしないで準備を始める。
「無視するとは、いい度胸だな、ああん」
「先に俺を挑発したのは、誰やったかいな」
「動揺して返事できずにいたから背中を押してやったんだろ」
「なんで…」
「お前のことだから、そんなことだと思ったけどな。いつも勝負を避けてたもんな」
「跡部も同じやろ。
いつも、無難なラインのサーブばっかり打ちまくりよってからに」
「お前と真剣勝負するには体力と気力と集中力のすべてが万全じゃないと負ける。
いつも2ゲームめだから、流すはめになるだけだったのに。
部長にバレてたのは厄介で仕方ない」
「とうとう、真剣勝負する日が来たんやな」
「テニスを楽しみたいなんて考えじゃ、無理なことくらい、わかってんだろうな」
「わかっとる。
せやから、跡部より先に準備始めたんや」
「無様に負けたら、承知しないぜ」
「跡部こそ、手ぇ抜いたら許さへんからな」
「わかってるよ。
俺様にかかってきな。
どんな結果が出ても後悔しないように」
俺と跡部は同時に部室を出て第1コートに向かって歩きだした。
「試合開始だ」
部長の一言で、俺たちは試合を始める。
サーブは跡部が取った。
ネットを挟んではじめて本気で対峙する。
確かに生半可な気持ちじゃ太刀打ち出来ん気合いを放つ跡部。
俺も、今までとはまったく別の気持ちが芽生えていた。
楽しみたいではなく、勝ちたいと。
お互いサービスゲームを相手に取られることなく試合は進む。
俺の本気を見た部員から声が上がる。
「あんな、忍足みたことないな」
あってたまるか、こんな状況で毎回試合しとったら身体がもたんわ。
一瞬外野に視線を向けた間にスマッシュを決められる。
まだ、負けへん。しっかり、返したる。
それからタイブレークに入り、試合は一進一退を続ける。
しかし、やはり跡部は強く、俺は負けそうになる自分を振るい立たせる。
スマッシュが決まると俺はガッツポーズする。
こんな姿をする自分に驚く。
そして、結局俺は跡部に勝つことは出来なかったが、本気で戦ったときだけに感じる達成感に酔いしれた。
「部長は、跡部景吾に決める。
異論のあるものは、今この場でのみ、受け付けよう」
「あるわけないだろ、すごい試合見せつけられてみんな、唖然としてる。
そもそも誰が部長に意見を言えると思ってる」
「跡部に決めたのは、忍足を本気にさせることが出来たことが大きい。
もし忍足を本気にさせられなかったら忍足を、部長にするつもりだった。
跡部も忍足も見事な試合だった。
テニス部を頼んだぞ」
「わかりました」(二人同時に)
「解散だ。
明日からは跡部を部長として頑張ってくれ。
そして来年こそ立海に勝ち、全国優勝を」
「はい」(部員一同)

1日を終えた俺は跡部を待っていた。
「遅いやんか、跡部」
「部長の引き継ぎやってたんだよ、誰かさんのせいでな」
「俺のせいに、しなや。
自分が俺のこと、煽ったさかい、この結果になったんやろ。
嫌なら煽らな良かったんや」
「仕方ないだろ、お前と真剣勝負したくなっちまったんだよ。
必死な姿のお前もいいな」
「こんなとこでなに言って…」
唇を塞がれた俺は思った。
もしかして、これをしてほしくて頑張ったのか、俺は。
まさか、そんなことあったら悔しくて泣きそうになるわ。
「部長ってのは、すごいな。
あんなに、たくさんいる部員たち1人1人の
特徴から苦手コースまで把握してるなんてな」
「そんなことしてたんか、あの部長」
「お前の所には、実力が未知数って書いてあったぜ。そこは俺も同意だ」
「部長、頼みまっせ」
「お前こそ、今まで以上に俺を支えろ。
俺様が許してやる」
このどこまでも俺様な男に俺はどこまで振り回されるんやろ。
でも、それも悪くないと思うてるうちは、仕方ないんかなー。
「わかった、支えたるわ。
どこまでもどこまでも」
その言葉に満足したのか、また唇を塞がれた。
俺は、部員のフォローやほかの雑務を担当する覚悟を決めたー!
次の章へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ