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□氷帝テニス部の掟(跡忍)byつぐ葉
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俺が入ってる氷帝学園テニス部には鉄の掟がある。それは…。
「なあ、侑士、少し聞いたんだけど新部長って、榊先生が決めるんじゃなくて、引退したレギュラー陣が、投票で決めるって本当かな?」
「ホンマらしいな。
でも、俺らの学年は決まりやろ」
「えーっ、それって跡部かよ」
「レギュラー陣に負けない実力とカリスマ、跡部に勝てるヤツおるか?」
「俺は、侑士だといいって思ったけどなー」
「なんで、俺やねん。
跡部に負けまくってるのに。
そもそも跡部が俺の言うことを聞くとは思われへんから、パスや」
そう、氷帝学園テニス部の掟とは、ほかの学校と違い次の部長を顧問の先生が単独で決めるわけではなく引退したレギュラー陣が投票で選ぶという変わったもの。
創立当初からの伝統らしい。
目の前で見てきた先輩に選ばれれば士気が上がるという理由らしい。
そのことについて俺は気にせんかった。
跡部になると疑いもせんかった。
夜、二人になったとき話してみた。
「次の部長は、跡部で決まりやろ」
「なにを言ってる」
だけど、跡部の考えは違っていた。
「俺様がそんなこと、するわけねぇーだろ、別のヤツにやらせとけ」
「指示されるの嫌いやんか」
「相手によるな。
先輩たちが決めたなら逆らわない」
「じゃあ、先輩たちが跡部に決めたら引き受けるんか?」
「そのときは考える」
「答えになってへんやんか」
「お前が部長なら、考えなくもないけどな」
「なんやねん、それ」
「今騒いだって仕方ない。
決めるのは先輩たちだろ、従うしかない」
珍しい反応を見せる跡部に驚いとった。
このとき、俺たちは知らなかった。
氷帝学園テニス部始まって以来の事態が起きたということを。

翌日、テニスコートに行くと跡部が囲まれとった。それを見た瞬間俺の心がざわつく。
だけど眼鏡を押し上げて、心を無にする。
俺に最初に声を掛けてきたのは岳人だった。
「侑士、大変だ」
「おはようさん、岳人。
どないしたん?」
「昨日話した次期部長のことなんだけど」
「ああ、跡部に決まったんか。
お祝いでも言わなあかんな」
「違うんだよ、大変なのは、お前だよ、侑士」
「なんで、跡部が部長で俺が大変なんや」
「だから創立以来初の同率1位なんだって」
「なにがや?」
「先輩たちの投票結果、跡部と侑士が完全同率の1位で、それがうちの部創立以来初の出来事でどうするかって話になってんだよ」
「俺と跡部が同率やて、なんでや」
「実力は確かに完全に跡部なんだけど、後輩への心配りやあの跡部も一目置いてるから、部長が侑士でも上手くやれるって思った先輩が多くいたらしい」
「俺、断れへんの?」
「無理だと思うぜ。
うちの唯一の鉄の掟に逆らうのはたとえ跡部でもな。だから侑士はもっと無理だな」
「だからって同率じゃ、どうするつもりや、
先輩たちは」
「だから今それを話し合ってるらしい」
「跡部はなんか言うてたか」
「俺様に張り合えるのは忍足くらいだと思ったがまさか本当にそうなるとは、笑えるなって。
超ヨユーって感じだった」
「そうか」
「岳人はどう思う?」
「先輩たちの意見も理解出来る。
実力じゃ確かに今まで跡部に勝ってないけど、部長としての責任感や面倒見の良さは確実に
侑士の勝ちだろ」
「うちは実力主義なんやから、強い跡部がなるのが普通だと、思うけどなー」
「でも来年入ってくる新人が跡部が部長だったらビビりそうじゃないか。
それ考えるなら侑士だよ、やっぱり」
「そうは言うてもなあー」
「先輩たちが出てきたぞ」
コートに前部長以下レギュラー陣が現れる。
「跡部、忍足、前に来い」
「はい」(二人同時に)
「結論から言う。
話し合いの結果では決められなかった。
理由は簡単だ。
どちらも部長として申し分ない資質がある。
それに二人が真剣勝負をしたことがないことが一番の問題だ」
「実力やったら跡部が上です」
「俺たちの目は節穴じゃない。
レギュラー入りが決まったらあとの試合は、
お互い流しぎみだったろう」
バレとった。
俺はテニスが好きだから試合に出たい。
ランキング戦でレギュラー入りが決まるとあとはテニスを楽しんでしまっていた。
それが、気づかれてるとは、まずい。
「いいことではないが、同じことは跡部にも言えるからな」
さすが、氷帝学園テニス部を率いる男や。
「そこでだ、跡部と忍足、真剣勝負をしてもらうことになった。
どの条件で部長になるかは教えない。
狙われると困るからな。
どうだ、二人とも?」
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