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□せいかいのおと
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今日も甲板で緑色の髪が揺れている。芝生に似ているな、と思いながら少しの間見ていた。

あまり見すぎると、カンが良すぎるあの剣士はすぐに目を開けてこちらを見るのだ。

「……じろじろ見るな」

「あ」

どうやら今のは見すぎだったようだ。

やたらと怖い顔をされて怯んでいるうちに、こちらを睨んだ人物はまた目を閉じてしまった。

「……そんなに睨まなくても」

誰に言うでもなく、小さな声でつぶやく。



この船に乗った当初、特別馴れ合う素振りを見せられたわけでもないが、それなりにコミュニケーションは取っていた。

面白いことがあれば笑顔が見られたし、戦闘で助けられることもあったし、会話も普通にしていたのだ。

だが、いつからだろうか。私への口数は必要最低限になり、用事が無い限りあちらから話しかけてくることは無くなり、向けられるのは険しい顔と冷たい言葉。

原因がわからないからどうしようもない。そのままの状態で今日まで来ている。

もちろん私はゾロさんのことを嫌いだと思ったこともないので、冷たい態度を取られても普通に接するようにしている。

何より、変にギクシャクすることで船の空気を悪くしたくない。

だが、何も気づかないほどクルーは鈍感でもなかったようで。

「心当たり……ないんですよね。必死に思い返してみても」

「そう…。ゾロの態度が変わってから、もう何週間か経つわね。私にも原因はわからないわ」

夕食後、ロビンさんに話を聞いてもらうのが日課となりつつある。
真っ先に異変に気付いてくれたのがロビンさんで、あちらからこの話題を持ち出してくれたのだ。

「考えられる可能性が一つも無いわけじゃないけれど……。難しいわ」

「えっ、その可能性って…?」

何かを掴んでいそうなロビンさんに期待が膨らむ。私が身を乗り出すと、ロビンさんは優しげに微笑んだ。

「ふふっ。人の心を読むのは何よりも難しいから、軽率に口に出せないわ。あなた達の関係に悪影響が出たら大変だもの」

「……ゾロさんの態度から察するに、もう私の好感度は地に落ちている気がするんですけど……」

「…案外、その考えにとらわれないことも大事かもしれないわ」

「えぇ……?」

核心をわかってそうなのに教えてくれないロビンさんにもどかしさが募るが、これは私の人間関係だ。やはり人に頼ってばかりではダメなのだろう。

「もう遅いわね、部屋に戻りましょう」

「はい……」

その日は結局モヤモヤしたまま、夜になっても中々眠れなかった。
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