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□凪凪
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ーーーなにか能力を貰えるなら、何が欲しい?

顔と名前を一致させるの苦手だから、人の上に名前が見えたらいいのになぁとは思う。
あと、名前を言っていいのかどうか、とかも判別できればなお良い。距離置くために、わざと苗字だけ名乗る人とかいるし。

ーーーわかった。

いや、わかったってーーーーーー




*****



「なんだそれ」

夢と現実の狭間にあった意識が浮上した。
ぼーっとした頭で、さっきまでの会話は夢だったと理解する。

だが、そんな考えは一瞬で吹き飛ぶ。

「さっっっむ。さむ。なんで、え、死ぬ死ぬ」

肌を刺すような寒い風。眠気も一緒に吹き飛んだ。辺りを見回すと、吹雪が吹き荒れる風景だけが広がっている。

私の記憶が正しければ、昨日は漫画を読みながら寝落ちしたはずだ。だがここには布団も何もない。まず、室内じゃない。
そもそも今の季節は春のはずで、こんな吹雪が吹き荒れる場所なんて近くに無い。

「…これも、夢?」

むしろ夢であって欲しい。このままこの軽装で突っ立っていれば、間違いなく死ぬ。こんな若さで死ぬのはごめんだ。私は100歳まで長生きしたい派だ。

こんなぐうたら人間でも、生きるためなら頑張れるらしい。動けば体力を使うのは承知だが、何もできないよりはずっと良いだろう。
とりあえず吹雪をしのげる場所はないかと、白い世界の中を歩き出した。



*****



痛い。寒い。痛い。お腹空いた。

顔に当たる風が冷たすぎてむしろ痛い。
数分さまよってみたが、人は見つからないし、建物も無い。おまけに空腹感も強くなってきた。

こんな意味のわからん感じで私の人生終わるのかな…。と考えた時、積もった雪に足を取られて思い切り転倒した。

「……ぶ。ツイてない…。ん?」

起き上がろうと手をついた時、雪ではない何かに手が触れる。
まさか人体の一部とかじゃないだろうな…と恐る恐る雪をどけて見てみると、それは果物だった。

「た、食べ物ーー。やったー」

雪を被っていてしっかりは確認できないが、ブドウのような形をしている。冷凍保存されているのなら腐っていないだろうと、少しかじってみた。
途端、口の中に広がる尋常じゃない苦味。

「まっっず、」

これはヤバいと思って吐き出そうとした時、背後から爆発音が聞こえた。

「!?!?」

驚いた拍子に、口の中のものを飲み込んでしまう。気付いた時にはもう遅かった。
そして、マズい果物を食べたせいなのか、身体の下からゾクゾクと何かが這い上がってきて、全身に鳥肌が立った。

飲み込んでしまったものはしょうがないと、爆発音の方へ目を向ける。

「…ワニ?…人?」

遠くから現れたのは、下半身だけワニの巨大な人間と、その上に乗る普通サイズの人間だった。
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