virtual or real

□第9話 仲直り
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ここが最後だという思いで保健室に乗り込んだ俺が見た光景は、


「あら、珍しいわね。どうしたの名無しくん?」


生徒が一人もいない保健室だった。
白石さんがいるかどうか先生に聞いてみても見てないという。
ここにもいないということは本当に家に帰ったのだろう。
そう思い部屋を出ようとしたとき、俺は違和感に気付いた。
とはいってもなんかいつもと先生の様子が違うなと直感しただけなのだが。
そう思った俺はとりあえず先生に伝言だけしておくことにした。


『もし白石さんにあったら昼休みに屋上に来てほしいって伝えてくれないですか?』

「いいよ。それくらいなら」


俺はそれだけ残して保健室を出て教室へと戻った。



白石 side


「って言われたけどどうするの?」

名無君が学校中を探し回ってくれているのを知って出ていこうかなとも思ったけれど、
やっぱりまだその勇気が私にはなかった。
それでもやっぱり...


「...昼休み屋上に行こうと思います」


私は名無君に会う決心をした。



主人公 side


昼休みになり、俺はななと二人で屋上に行き、白石さんを待っていた。


「ほんまに白石さん来るの?」

『たぶん...来てくれなかったらそんときはまた考えればいいよ』


それからしばらくして、白石さんはやはり屋上に来てくれた。
俺とななが一緒にいるところを見て白石さんは少し顔が暗くなった。


『あのさ、話があって今日来てもらったんだけど』

「う...うん。あんまり聞きたくないけど」

『俺さななとは付き合ってないんだよね、みんな勘違いしてるけど』

「うん。2人ともお似合いだもんね...え?」

『いやだから、付き合ってないって。な、なな』

「今はまだ付き合ってへんでななたち」


そして流れる時間。
しばらくたって白石さんは全てを理解したのか
顔を真っ赤にして俯いてしまった。


『白石さん?』

「...はは...はははははっ」

『え!?どうしたの?』


今度はいきなり笑いだした。


「なぁんだ。付き合ってたんじゃないんだ」


白石さんはニコッと笑顔をこちらに向けて、なにやらななと目配せをしていた。


「ちょっと女の子同士で話があるから少し待っててね」


そう言って2人は俺から少し離れたところで二人で話しを始めた。


しばらくして、2人とも仲良くなったのか笑顔で戻ってきた。


『白石さん?大丈夫?』

「うん。もう平気。あ、あとさ...」

「まいやん頑張れ」

「あのさ、私のことも下の名前で呼んでくれたら嬉しいなぁって」

『あ、うん。わかった。麻衣』

「うん!」


白石さん改め麻衣の機嫌も治ったところで、俺はもうひとつの話を伝えようと心に決めた。


『あのさ、俺自分のことさすがに鈍感じゃないとわかってるからさ、2人の気持ちには薄々勘づいているんだけどさ』

「「......」」


鳩が豆鉄砲をくらったようにその場から動けないふたり。その顔は赤くなっており、


『ごめん。2人の気持ちには今は答えられない』


先程の顔から変わって今度は血の気が引いていた。
どうしてって顔をしている。


「それって、もしかしてほかに好きな人おるん?」


ななが恐る恐る話しかけてきた。


『そういうわけでもないんだけど、個人的にちょっとあってね...』


今はまだ言えないけど。


『でも別に嫌いって言うわけじゃないから...なんて言うかこれまで通り接して欲しいなって。自分勝手だけど』


こんな格好悪い男だけどそれでも俺と仲良くしてくれるなら。


「私たちが嫌いになることないってわかってるくせに」

「ほんま、意地悪な男やな」

『ごめん。でもありがとう』


大切な仲間をもててよかったと心から思った瞬間であった。


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