中編夢

□幸せの花嫁2
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父に勝手に取り付けられた政略結婚の話を聞いてから数日後、私の結婚相手となる海賊が迎えに来たらしい。
父は私が逃げ出したりしない様に直前に結婚の話をする予定だったらしいが、三番目の兄が先走って言ってしまった為この数日間は逃げ出さない様にほぼ監禁された生活を送っていた。
確かに逃げ出す気はあったけれど、まさか監禁までされるとは。
父は余程私を海賊と結婚させたいみたい。

私の結婚相手となる海賊が来たと呼び出しを受けた。
いつもは地味な服しか着る事を許されないのに、こういう時だけは小綺麗なワンピースを着せられて。
見映えだけ良くしようっていうの?
中身は教養もないただの田舎娘なのに。

大広間に通されて父と、多分相手方の部下の人達と、そして…明らかに背丈が大きすぎる、4、5メートルあるんじゃないかっていうくらい大きなオレンジ一色の男の人を見て私は固まった。

「この方がお前の結婚相手の…」

「シャーロット・オーブンだ。」

父が紹介した相手はオレンジ一色の大男、低い声を発し名乗ったのもオレンジ一色の大男。
え、嘘、まさか、私の結婚相手はこの大男?
正直、怖いと思った。
身体が大きいのは勿論、低い声も私を見下ろす眼光も海賊らしい野蛮そうな外見も全部含めて怖い。
…けれど同時に、これはチャンスだと思った。
この人はとても強そうだ、この島を滅ぼすなんて事…容易くできそう。
私はこの島に思い入れなんてない、父や兄達がどうなったって構わない。
父だけが都合のいい結婚なんて私は嫌だ、もしかしたら私も殺されてしまうかもしれないけれどそうなってしまっても構わない。

震える手で、私は結婚相手に指を指す。
そして精一杯睨み付け、意を決して大声で叫んだ。

「私はこんな人とは結婚しないッ!!」

シーン…と静まり返る大広間。
全員が固まり目を見開き驚いている中、結婚相手のその人だけは顔色一つ変えず私を見下ろしたまま。
数秒の間の後、最初に口を開いたのは私の父だった。

「お前…!!オーブン様になんて事を!!」

その言葉の後、周りがざわつき始める。
知らない、私にはどうでもいい。
自暴自棄になって父の制止も聞かずに私は大広間から走って出ていった。
相手は海賊だ、あんな失礼な事を言われたら怒って暴れるに決まっている。
ちょっとだけ初対面の相手に失礼な事を言ってしまった罪悪感を感じたけれど、言ってしまっては後の祭り。

屋敷の外を目指して走っている最中、何故か背後の大広間の方から大きな笑い声が聞こえた気がした。

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