お題夢

□09.視線での会話
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私用を済ませ自室に戻ろうと城内を歩いていた時、少し離れた場所で部下の方達と会話をしているモンドール様を見掛けて足を止めた。
真剣な表情で話をしているから仕事の話でもしているのだろうか、距離がある為に会話の内容は聞き取れない。
邪魔になるといけないと思い近付かずに、こっそりとモンドール様の様子を伺う。
キビキビと指を指して何かの指示を出していたり、鋭い眼差しで部下の方を見たりしているモンドール様。
普段私の前では見せる事のないモンドール様のそういった姿が私は好きだったりする。
真面目にお仕事をしているモンドール様の姿は凛々しくカッコいい。
そうしてしばらく見惚れていると、仕事の話が終わったのかモンドール様に頭を下げて部下の方達が立ち去っていった。
モンドール様は腕を組み、何かを考え込んでいる様で。
声を掛けたかったけれど忙しいのかもしれない、私も立ち去ろうかなと思い数歩歩くと置いてあった椅子に足をぶつけガタンッと音を立ててしまった。
やってしまったとモンドール様の方を確認するとやはり今の音で私の存在に気付いたらしく、視線が合うと驚いた顔をされる。
見付かってしまったのならこそこそする必要はないわと私はにっこりと笑いモンドール様に小さく手を振ると、

"お疲れ様です"

"今日も素敵ですね"

という言葉を口パクで伝えてみた。
それが伝わったのかモンドール様は一瞬顔をしかめて間を置いた後、

"後で言え馬鹿"

と顔を少し赤くしながら口パクでそう伝えてきて、視線を反らすと手で帽子を押さえながら逃げる様に足早に立ち去っていく。
先程まで部下にしていた態度から一変して慌ててた様子のモンドール様に笑みが零れた。
後で会ったら、ちゃんと真っ正面から伝えてあげよう。

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