お題夢

□10.ひざまくら
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膝にのし掛かるずっしりとした重み。
少し前に帰ってきたカタクリは私がおかえりなさいを言うよりも先に一言、

「…膝を貸せ。」

と呟くと私の膝にどっかりと頭を乗せてきた。
昨日から今朝までずっと戦闘があったらしいが、帰ってきたカタクリには怪我の一つも見受けられない。
表情からでは分からないけれども仰向けで腕を組み静かに目を閉じているカタクリは疲れているのだろうか、身動き一つしない。
カタクリの髪にモフっと触れて撫でてみたが、されるがままで彼は微動だにしなかった。

「…カタクリ。」

「何だ。」

「…お疲れ様。」

頭を撫でながらカタクリに労りの言葉を掛けると、少しだけカタクリが私の撫でる手にぐいと頭を押し付けてくる。
…もっと撫でろという彼なりの意思表示なのだろうか。
珍しく自分から甘えてくる様子はとても今朝まで戦闘をしていた人間には見えない。
だけどもその仕草がまるで犬の様で微笑ましい。
暫くカタクリの頭を撫でてから、ふと思い立ってカタクリの襟巻きに視線を向ける。
呼吸をしているのかを疑うくらいにこちらも静かで揺れてもしない。
そっとカタクリの襟巻きを掴み下に下げカタクリの口元を空気に触れさせると、今まで閉じていたカタクリの目がうっすらと開き私を見上げてきた。
いつもは私が見下ろされている側だからとても新鮮な気分。

「…何だ。」

カタクリの穏やかな低い声が響く。
私はカタクリの目を見つめて、笑って。

「…今日は私からしてもいい?」

カタクリの唇を指先でなぞると、意味をすぐに理解してくれたカタクリの頬が緩んだ。

「ああ。」

カタクリがまた目を閉じるのを確認してから、私は身を屈め労りの気持ちを込めてカタクリにキスをした。

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