zzz

□Sogni stupidi
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「緊張する………」

私は、今、刑務所の前に立っていた。なにも出頭しに来たわけじゃあない。ポルポの試験を受けに来たのだ。生まれて初めて入る刑務所に少しワクワクしつつ、足を進めた。

中へと進むと、いかにもな柵と警官たちがいた。持っていた荷物を指示通りにトレイに入れる。柵の奥にいた警官からボディチェックを受け、諸注意事項を教えられる。同じことを言うもんだなぁとのんきなことを考えながら分厚い頑丈そうな扉の奥へ進む。ガラスの前まで来るとじっとその人が現れるのを待つ。

「君が組織に入りたい奴かね〜?」

「はい。ドローレと申します」

心の中で油狸だな、とつくづく思った。

「ブフー、まぁ何か飲むかね?ワインなんてどうかね?」

まんま言うなこの男は!!!!!!

「えぇ、ぜひ」

「ブフゥーー、入り口の警官に何か言われなかったのか?」

「何も受け取ってはならないとは言われましたが、上司になるであろう人のお誘いは断れませんから」

「ブフー面白いやつだなぁ〜〜〜まぁいい早速面接試験を始めようじゃないかブフゥー」

早いところライターを渡して私を家に帰してほしいもんだ。その後も着々とポルポとの会話を進め、ライターを受け取るところまできた。そっと受け取り口に手をいれ灯を消さぬよう細心の注意を払い自分へ手繰り寄せる。さあ帰ろうと踵を返した。

「ドローレ君」

ポルポに呼ばれ顔をそちらに向ける。

「君は何のために組織に入るのかね?」

暗殺チームを手助けするためです。とは口が裂けても言えない。ちょっと言いかけて冷や汗をかいた。危ない。返答を待つポルポの目は好奇心と猜疑心が見えた。どうやら私は彼のお気に入りにはなれなかったみたいだ。よかったと胸をなでおろし、ベストな回答を考える。もちろんこの時のベストは暗殺チームに入れる回答である。暗殺チームは厄介な人間の集まりだ。なのでなるべくぷっつんしている風に振る舞いたい。

「…人を、殺す為ですね」

飛び切りのスマイルをつけてその場を去った。

ドアの前まで来て私ははっず!とひとり落ち込んでいた。中学の頃の黒歴史が呼び起こされているようで気持ち悪い恥ずかしさだ。ちらと手に持つ揺れる火を見つめて、ふっと息を吹きかけて消した。これで、後は明日もう一度ここへ来る前に再点火するだけだ。ライターをポケットにしまい、帰路についた。

遅めの昼食後、ついにやってきた。私が、彼らを救えるか、否かの判断が。家の中で、まるで修行僧の様に精神統一のポーズ(見様見真似である。)をして、いざ!とライターの再点火をした。来る矢の衝撃に備えた。急にずぎんと鈍い痛みが走り、たまらずせき込むと大量の血液が口から出たのが分かった。ずるりと自分から何かを引きずり出されるような最っ高に気持ちの悪い感覚を覚えた。うっすらと目を開けた先には、真っ黒のマリアを連想させる容姿のナニカとブラックサバスがいた。ふと気づけば痛みは引いており、吐いたはずの血もなかった。ブラックサバスは「お前は選ばれた者だぁ!」と言って消えてしまった。握っているライターには再び火が揺れていた。

「よ、よかったぁ…とりあえずスタンドでたぁ…」

ライターを安全な所へ置き、だぁっと脱力する。

「そうとなれば、どんな能力かためさなくっちゃぁね」

ふっと斜め後ろから覗き込むようにナニカが私を見ていた。スタンドはパワーを持った像である。私の場合は自我があるのだろうか。

「あなたの名前はまだ決めないでおくわ」

ナニカはこくりとうなずきまた消えた。少しかわいい。ピストルズの様ににぎやかに話すことはなさそうだ。

深夜の路地裏といえばろくでもない人間たちに出くわさないでいられるほうが不思議なほど治安が悪くなる。ので、絡んできたチンピラを人気のなさそうなところに誘い込み、実験相手になってもらうことにした。やれやらせろーだのブチ犯してやるだのと品のかけらもないセリフのオンパレード。ガン無視しているとチンピラAが突っ込んできた。ただ単に殴り掛かりに来ているだけの様なので、よけたうえでこの腕をつかめないかなぁと考えながら物は試しとやってみると意外や意外、するりとできてしまった。その勢いのまま背負い投げをしてみる。チンピラAはきれいに弧を描き地面と熱烈なキスをしていた。

「口だけもいいとこね」

「てめぇ!あれ、なんだ、なんで何も聞こえねえんだ!!!!!!」

耳が聞こえなくなったのかチンピラAはおかしなイントネーションでわめき倒している。ふむ、私が触れると聴力をなくすのだろうか。それと、身体能力も上がっているように感じられる。今夜中にこの能力を把握しておきたいな。



その後も逃げ回るチンピラ共協力のもと、実験を続けると、日が明るくなってくるころには大方の能力は把握できていた。私の能力は、触れたものの五感を奪う能力だった。一度触れると、『聴覚』。さらにもう一度触れると『味覚』。その調子で触れるたびに『嗅覚』『視覚』『触覚』の順で奪うことができる。完全に相手から奪うこともできるし、ちょいとのぞかせてもらうこともできた。そして、触れるのは私本体か、本体の体液でないといけないらしい。スタンドで触っても能力は発動しなかった。スタンドがスタンドに振れた場合はどうなるのかまだわからない。身体能力の上昇についてはスタンド云々の話ではないようだ。

「さて、」

頭の中で軽く整理しながらシャワーを浴び、頭を乾かし、着替えを済ませソファに座り込むとナニカもとい私のスタンドと正面で向き合った。

「あなたの名前なんだけど」

「!」

スタンドは少し背をぴんと伸ばしワクワクといった表情をこちらに向けた。

「アンコンディショナル・ラブ(無償の愛情)でどうかしら?」

「!!!」

嬉しいのかぶんぶんと頭を立てに振りとても気に入ってくれたらしいことを伝えてくれる。

「これからよろしくね」
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