鬼滅の刃

□英姿颯爽弐
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12月31日、大晦日。

鬼殺隊は年の瀬も大忙しである。
年の瀬にもやっふー!な鬼が出て、討伐して疲れて帰るはお馴染み煉獄家である。
柱は自分の屋敷を持ち、そこに継子や将来有望な隊士達を住まわせて日々鍛錬をしている。
斯く言う私も、炎柱と継子の補佐役として、この煉獄家で寝泊まりしておるわけである。
柱と継子の動きに萌えに萌疲れて帰ってくれば、煉獄家のアイドル千寿郎君がお出迎えしてくれはる。千寿郎君のせいで更に萌尽きる私を、未知の生物を見るような目付きで、遠目で見てくる愼寿郎さん。
「あれえ?先代も私の事待っててくれはったんですかぁ?もうそんな糞虫見るような目で見てくれやって!このこのツンデレさんなんやから〜。」
と手を降っておく。

ちなみにそんな一連の名前の言動と、今にも怒鳴り飛びかかってきそうな先代炎柱の表情を見ていた隊士達は、「アイツの心臓、毛じゃねえな…鋼が生えてるんだぜ、きっと。」と肝を冷やしたと言う。

何はともあれ、大晦日。
無事に鬼を討伐して帰って来れた。
お迎えしてくれた煉獄千寿郎も、何時もと違い何やらソワソワしているようで、それに気付いた兄、杏寿郎はどうした?と声をかける。


「あ、あの。皆様ご無事で何よりです!今日は、あの年の終わりであります。今までの1年、こうして無事にお顔を見れた事が嬉しく思います。」


あ、尊い…!!
と、思ったのは私だけではない。
見てみろ周り、いい歳した連中が千寿郎君の言葉にほわほわしだし、涙を流す奴もおるで!(その代表が私であるがなっ!!)


「それで、拙い自分が作ったものではありますが…、温かいお蕎麦をご用意しました。味は保証出来ませんが、どうぞ、身体も冷えてるでしょうからお召し上がり下さい。皆様のお口に合うと嬉しいです。」


どこの女神様やっ…!!!?
ソワソワしてはったんは、それか!と納得した!
美味しく作れたかな〜、喜んでくれるかな〜、からのソワソワかい!お姉さん、鼻血が出そうやで!
と、私を含めた(柱と継子除く)煉獄隊はあまりの尊さに地面にめり込まんばかりに膝をつく。
終いには、お母さ〜ん!!と泣き出す隊士までも現れた。


大晦日、
千寿郎君が作ってくれた年越し蕎麦はお出汁が優しくて、具沢山で心も身体もあたたまるものでした。




















そして、1月1日。



朝は煉獄家で、大晦日鬼討伐へ向かう前に千寿郎君と一緒に作ったお節料理を綺麗に重箱に詰めて、雑煮は私の生まれ故郷では白味噌を使って具沢山に作ると言ったら、食べて見たいです!と天使に言われて、関西風の雑煮を作って皆に振る舞った。角餅やくて丸餅を入れるんやで〜とか。具は金時人参に大根、ほうれん草、里芋、で、兄上の大好物であるさつまいも入れたいですとの千寿郎君からのリクエストでさつまいももぶち入れて、柚子の皮を飾りに入れる。
見慣れない雑煮に周りは多少困惑するが、炎柱がうまい!うまい!!と騒ぐものだから、他の隊士達も加わり寸胴鍋程あった雑煮は瞬く間になくなった。
自分の料理を美味しい!とこんなにも食べてくれるのは嬉しいね、と千寿郎君の頭をナデナデしたら、頬を染めてはにかむ天使。そう、私、新年早々無事に死ねました。煉獄さんのモグモグしてる姿も大変可愛らしかった…!

ちなみに食後には、関西の正月の習慣である梅と結び昆布の(無病息災、厄除けの意味がある縁起物)入ったお茶を出したら、これまた美味いと皆さん喜んでくれるものだからホワホワした。

























そしてやってきました、この日が…。
産屋敷のお屋敷の庭で行われる新年恒例の催し物。
柱、継子同士の羽子板大会が…!!
羽子板とは何ぞ?
そこはグーグル先生を頼れ。
しかし、柱同士となると羽子板とは?と思わず二度見、いや三度見する具合に激しい。
手に持つ羽子板は最早兇器である。
羽根は最早、飛び道具(鉄砲の玉)である。
観客席には一般隊士、隠の皆さんが誰が勝つかと賭けをして楽しんでる。
おい、そこ変われ。私はそっち側の人間ぞ?

私がこう言うのは…、
そう、何故か、私も羽子板を持たされて、煉獄さんの隣に立っていたからだ。
…何故っ!?
ここは継子の甘露寺さんやないの?
いや、この戦いにあの可憐な少女を参戦させる気か、否であるからして、すぐさま羽子板をフルスイング宜しく振り回しながらいろんな具合を試す私って協調性マジで神じゃね?とも思った…、が、
いやいやいや、周りにいる連中の殺気よ…!!
あ、これ私お〜わった♪と、泣き笑いながら羽子板をまたフルスイングする。
「笑いながら泣くってお前器用だな。」
との、音柱殿の言葉に、イラッとして彼に向かって羽子板を発射した私は悪くない。頬を掠めて、あの綺麗な(笑)顔に一筋、つらりと血が流れる。
手を離れた羽子板は、羽子板らしからぬ音を立てて庭の松の木に刺さった。
そう血が流れる!これこそ柱同士の羽子板大会の極意?だ!!


「ごめん遊ばせ。羽子板がこれからの自分達の未来が哀れ過ぎて泣いたのでしょう。ほら、毎年ボロボロにされとりますから。悲しい涙が私の手に伝ってきて滑ったわ、めんごめんご。」
「お前っ?!狙ってやったろ!!煉獄!!テメーんとこの補佐役凶悪過ぎるわ!!!教育どうなってんだ!!!心から俺に!派手に謝れ!!」
「すまん!!」
「ごめんねごめんね〜。」
「お前等、謝る気ねぇだろ。」
「うむ、すまん。」
「(笑)からの(笑)」


何に対してのすまんなのか分からないが煉獄はうっすら笑いながら謝罪すれば、その補佐役は更に悪ノリする。何だこれと、薄ら笑う男に違和感を抱きながらも、炎柱組のそれぞれの態度にブチ切れる宇髄であった。


今年は波乱の年になると、柱でもなければ継子でもない、異例の柱補佐役になった自由奔放に庭で暴れる残念過ぎる美人事、名字の姿にごくりっ…と周りの一般隊士達は喉を鳴らすのであった。






試合前と言うのに、私の持つ羽子板は先程の件でもうボロボロである。悪いのは一回戦の相手、音柱殿だと力強く言いたい。
対する音柱殿は「あの糞女絶対殺す、殺す!!」と息巻いている訳で、隣でくっそ可愛い妻達が窘めておるわ。死合は、違った…試合は2対2で行われる。柱とそれぞれの継子、継子が居ない場合は隊の中から1名選ばれる。
で、炎柱チームは煉獄さんと何故か私が選ばれて、ブー垂れてたら、煉獄さん直々のご指名と分かるや否や、やっふーしたのは数十分前である。本当、私そー言う所だぞ!


「名字君!勝つぞ!!」


で、そんな空気を読まない、読めない上司の可愛さよ。正月早々良いもの見れたと熱くなる目頭を押さえる私。尊いが過ぎた。目に入れてもきっと痛くない、愛でられる。


「煉獄さん、あの派手な(お馬鹿)野郎に勝ったらご褒美下さい!!そう、ナデナデして下さい!全身を、じゃねー、やっべー本心でた。ナデナデして下さい頭を!!」


やべー、やべーぞ、本心がポロリしやがった!!
残念過ぎる美人って本当だったんだ…!!
とのギャラリーが煩いが知らん!
煉獄さんからのナデナデの方にベクトル向いとんのじゃい!黙らしゃい!!
野次やら何やら煩いギャラリーを睨んでると、ぽふんと頭頂部に感じた温もりに振り返る。


「そうだな!勝てたらナデナデしよう!!」


あばばばっ、勝つ前にご褒美もろてんか私!!
と、勝つ前から頭を撫で来る炎柱の天然過ぎる言動に無事死んだ私なのでした。
もう負けてもええわとなったが、ここで負ければ煉獄さんが悲しむ!!それはいただけない!!


だからして、

「音柱殿!わたくし勝つ所存でありますればどうぞよしなに。どうぞ派手に…、死に晒せぇぇええい!!!」


「お前、本当、そーいう所だぞ!!!怖ぇーわ!!」


ニヤリと、美しい顔(かんばせ)が妖しく笑みで歪んだ瞬間、轟々と闘気が膨らみ…瞬く間に修羅場へと変わるのであった。
その夜叉とも言える名前の背後で嗤う煉獄杏寿郎の表情や如何に。
それを視界の端に捉えた宇髄は友でもある煉獄杏寿郎の…豪放磊落、明朗快活をそのまま人にした様な男の、薄ら笑う姿を、本性を垣間見て愕然とした。



あれは、これの使い方を分かってやがると。
天然ぶって、その裏では、これの好意を知って…、
悪態はくつが、まるで妹のようで友の様なこの女とのやり取りの中、先程感じた違和感はこれか!と知ることとなる。すまん何ぞ口にしながらも、
微笑んだ煉獄め!
ウチの補佐役と何仲良くしてくれてるのだ、
そのまま闘気溢れた名前にでも殺られろってとこか?!
コイツ、実はねちっこい…!!と、補佐役からの強烈な一撃を跳ね返しながら宇髄は思うであった。





(これ、あれだな。この前乳を擦り付けろ言ったが、実行してたらコイツ色んな意味でヤバかったろうな)
















大正コソコソ話

実は知らぬ間に炎柱から溺愛されてた主人公。
仕事は出来る、字が美しい、家族にも優しく微笑む、色んな事に良く気がつく、そして気になって目で追っていたら、よくよく見なくても美人だと気付く。
料理も美味くて胃袋も掴まれてしまい、どないしようとなるが、主人公からの隠しもしない想いに、ああ、このままでも悪くないと更に悪い顔して笑う煉獄さんも美味しいよね!ってなったって話。
今回そんな彼女と仲良く?する宇髄さんに嫉妬して、腹黒い笑みを浮かべる煉獄さんに気付いたのは宇髄さんと産屋敷家の皆さんである。










  
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