甘露な日々

□初めてのデート編 file4
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トロピカルランドのマスコットに、
明るい園内のBGM、
親子の会話、
男女の会話、
通りすがりに香ってくるチェロスの甘い匂い。

繋がれた右手、と、繋がれた右手の先には眩しい位の笑みを浮かべる安室さん。

ドキドキ高鳴る心臓は、
とても煩くて、
繋がる手から相手に伝わってしまうのではないかと思う位に忙しない。


夢ではないかと、
何度も繋がれていない手で頬をつねって確かめる。

うん、痛い。
と言うことは、夢じゃあない。
あばばば!!
の、繰り返しである。

私の不審な行動に、安室さんは綺麗な笑みを浮かべて頬をつねる手にそっと手を添えて、綺麗な頬に傷が付きますと、更に蕩けるような笑みをするのだ。
ああ、両手を彼に取られてしまった…!

向き合う形で、
少し上にある安室さんの顔を見てしまったが最後!


「ほら、やっぱり。ほっぺた赤くなってます。」


と、そろりと撫でられた頬。

ああ、私の命日は今日だったのか…!
と、意識を飛ばしたのだった。



(あ、また気絶した?!)
(っぶぶぶぶぶ←震える妹)
(ちょいと安室さぁん!また家の姐さん気絶させたの?アトラクションにまだ乗れてないんだけどさぁ!ん?どんな色仕掛けしたのさぁ〜)
(色仕掛けって…何もしてないよ?こう頬をつねってたから、止めなさい的な?)
















「あれだよな。無自覚の色仕掛け的な?安室さん程のイケメンとなると、やることなす事、なんでも刺さるっていうか。」

「コミュ姉、免疫ないに等しいね。だからこそ、僕達が上手いこと動かないと!!」

「う〜ん…、でも、無理しても名無しさんさんのキャパオーバーしないか?さっきのやり取りで気絶したんだぞ?今の状態だって…目を覚ましたお姉さんが知れば、直ぐに夢の国に飛び立つ予感がする。」

「(私も、そう思います。)←筆談」


そう、あれから気絶した名無しさんお姉さんは安室さんに抱えられ、園内のベンチに運ばれた。
そ!れ!も!!
お姫様抱っこで!!
そのまま、安室さんは何を思ってか名無しさんお姉さんをベンチに横たえ、頭を己の膝へと誘ったのだ!!
所謂、膝枕!!!
これ、お姉さんが目が覚めた時の反応が怖い。いや、ある意味慌てる様は楽しみなんだけど(この思考をする時点で、只野君も古見さん姉妹病の初期段階を突破している)

僕達はその横にあるベンチに腰掛けて、小声てやり取りをしている。
古見さん(妹の方)も心配そうに姉である名無しさんさんを見ていた。
このデートの総指揮官であるなじみも名無しさんお姉さんのコミュニケーション能力の低さに『敵もさることながら…味方も手強かった』と迷言を残す位に、僕達はこの前途多難過ぎるデートの行方に三人同時に溜め息をつくのだ。

















予想通り、あの後目を覚ましたお姉さんはお約束通り…夢の国へ旅立った(気絶した)
その一部始終を見ていたクラスメイトは、

『ああああああ!!?』
『安室さんが羨ましい』とか、『名無しさんお姉さまが尊い!!!』とか、
妬みや羨望渦巻く塊となって、一般人や園のスタッフ達に不審な団体として遠巻きに見られていた。


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