刹那の日常

□ホンマにあった怖い話
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GWを過ぎて、
気候も夏の様に日々暑さを増してくる。
湿度も上がり、

もうすぐで、梅雨だ。

朝まで店で飲んで、お客さんをタクシーまで誘導してお見送り。
AM6時ーーー、この季節になるともう外が明るくなっていて、ビルの隙間から射し込む光りは薄暗い店から出てきた眼には眩しすぎる位で、一瞬視界が白んだ。

グッと伸びをして、


「さて、片付けしてからモーニングでも行こかな?」

行き付けの喫茶店のモーニングは日替わりで、あるアルバイトが入ってからはメニューも増えて専ら美味いと評判がある。

「今日は零居るんやろか〜。」

そして、私の密かな楽しみでもある。
なかなかプライベートでは会えない彼との、

「...密会みたくね?あれ、これなんか言葉だけ聞くと、やらしくね?」


そう、今までの真面目な雰囲気を壊すエアークラッシャーこと、名無しの1日はやはりそんな阿保な一言から始まるのであった。




AM7時ーーー

店を出て歩き出す。
夏と言ってもまだこの時間は空気が冷たい。
朝方まで飲んでいたから、酔い醒ましに丁度良い。

歩き煙草は行儀が悪いけど、この時間道行く人はまばらだ。店まで歩いて10分、煙草一本丁度良く吸える時間である。

煙は吐いて、大きな欠伸を隠す事なく漏らして、生理的に流れた涙をぐしぐしと指で拭う。


後10分ーーー、
アイツは元気でやってるやろか?
眼を細めて笑う。



(((何あのイケメン、微笑みが眩しすぎる...!!)))←通りすがりの一般人



(あ、昨日のモノマネ番組でのアン●ールズ田●さんの菜々緒、こうやって薄目で見たら滅茶苦茶似とったなぁ...。)


そう、この女はどこまでもエアークラッシャーなのだ。





カラン、とドアベルが軽やかに鳴る。


「いらっしゃいませ〜、あ、名無しさん!おはようございます!早起きですね〜。」

「いやいや梓ちゃん、私今仕事終わったとこやからおそようさんやで〜。」

「そっか、いつもお疲れ様です。」

「もうその君の言葉に眠気も疲れもぶっ飛ぶわ!私と一緒にモーニングでもどうかな?」

「あは〜、私仕事中なので。」

「手厳し〜!そんな梓ちゃんが私は大好きやで〜。」


と、喫茶店ポアロの看板娘である梓嬢とのやり取りは最早定番となりつつある朝のご挨拶だ。
店の中はコーヒーの香りやトーストの香りがして、どこか懐かしいような家庭的な香りがする。

そして、カウンターの奥で作業する人物の影を見つけて手を降る。


「透もおはようさん!今日もイケメンは健在かなぁ?ハムサンドの前に前菜でスマイルおくれ!ハムとレタスの間に挟んで食べたるねん!」

「...おはようございます。名無しさん、残念な美人って言葉知ってます?」

「嫌やわ〜、美人やなんて...。」

「耳 、腐ってます?」

「腐っとんのは耳やない...、脳ミソやっ!!!」

「素敵なドヤ顔、ありがとうございます。そして知ってました、腐りきってましたよね。はい、ハムサンドです。スマイルは今日から名無しさん限定で500円になります。」

「スマイル、以外と安かったーーー!!おかわりおねしゃす!」



そして零ーーー、安室透との挨拶もテンプレ化されており、一通り見ていた梓ちゃんはクスクスと笑い出す。
あ、かわええ〜。


「本当、仲が良いですよねお二人。まったくタイプが違うのに。」

「歳が同じやからかな〜。お互い料理も好きやし、ね?音楽とか映画とか趣味が同じでな。あ、青●レストラン欠かさず観てるとことか?結構料理の参考になるんやで〜。」

「青空●ストラン...?!ふ、ふふふ。うま〜い!ってやつですよね?」

「あ、も一回!梓ちゃんのうま〜い!録音させて!」

「一回500円になります。」

「おかわり以外と安かったーーー!!((c)完熟フ●ッシュ風)」







AM8時ーーー
コーヒーとハムサンドと、有料のスマイルおかわりした所で、
ポアロの上に住む毛利親子と名探偵のご登場である。


「おはようございます!」


蘭ちゃんの可愛いらしい声が、耳を幸せにしてくれるわ〜。


「おはようさん、モーニング一つな。おう、名無しさん、仕事上がりか?」


黙ってたら渋いおじ様毛利探偵からお声をかけてもらい、


「おはよ〜う、安室さん、梓さん、と、(顔面可笑しい)名無しさん!」


めちゃくそ生意気可愛いコナン坊やからの副音声、聞こえとるで〜。
会う度顔面可笑しいしってワード、テンプレ化しとんのかい!

いや、確かにニマニマのによによしとるけどな。だって天使(梓と蘭)が居るんやから、しゃーないやん!イケメン透と黙っとったらイケオジの毛利先生も居るし、あざといコナン坊やも加わって...、何、ここが天国か!?ってなるやん!!
この私の気持ち分かる?分かる人挙手して!

挙手してくれたんは、毛利先生。
何か知らんけど涙が出た。

(も、毛利先生ぇ!うちどこまでもついてていくわ!)
(娘が可愛いってのは...分かった上で挙手したまでよ。後、梓ちゃんも。後はどうでもいいがな!)
(自分に素直な毛利先生素敵!)


モーニングを頂いて、食後のコーヒーを楽しむ。ブラックが美味しい。普段はレギュラーコーヒーを飲まないし、インスタント派でミルクを入れるのだが、ポアロのコーヒーはブラックが美味いのだ。
沁みるわ〜と、また一口。


「目が覚めちゃいますわ、これ。」

「もう、ちゃんと休んでくださいよ名無しさん!まあ、確かに徹夜明けのテンションって可笑しくなるの分かりますけど...。」

「やね〜。眠いのに家に帰ったら目が冴えて...気ぃ付いたらなんや知らん3日経ってたわ〜。これ昨日あった本当に怖い話やで。店に帰って自分にゾッとした。」

「「「「え?」」」」


「え?何か可笑しいこと言うた?」

「名無しさん...、寝てないんですか四日間?」

「あれ?そーなるんかな?何か眠すぎて忘れたわ〜。あれ?...蘭ちゃんの背中に羽根が見えるわぁ、やっぱ天使やったんやなぁ。梓ちゃんもや〜。ふぇ、毛利先生後光が差して見える...、こ、コナン君、もふもふさせてー、わんちゃんの耳やんなそれ?透、お前っ、それ童貞殺すセーターやん!どした?!」


四徹目の名無しにはどうも幻覚が見えてるようで、


「ふふ、ふふふ...。ははははは、天国が家から歩いて10分のすぐそこにあったーーー!!!」


と、叫んだ後、勢い良くカウンターに突っ伏した。ガッ...!!ともの凄い音を立てて。


「ちょ、名無しさん?!だっ大丈夫ですか?!!」

「...死んだか?」

「お父さん?!縁起でもないこと言わないでよ!!」


くひゅーーー...、
くひゅひゅーーー...、


「...寝てる、みたいだね、名無しさん。」

「人騒がせなやつだぜ、全くよ。梓ちゃん、珈琲お代わり頼む。」


間抜けた寝息を立てる名無し。
安堵する女子と、通常運転の迷探偵。
彼らに気付かれないように、囁き交わされる少年と青年会話は、


「...名無しさんのあれ、四日間寝てないって...まさか。」

「...ああ、四日間、店終わりにウチ(警察庁)に缶詰めだったからね。まさか寝てないとは...。後で説教だな。」

「あははは、程々にね。」


説教だと口では言いつつも、カウンターに置いてある膝掛けを名無しさんに掛ける安室さんの表情は柔らかく、そっと頭を撫でる仕草は何処までも優しげであったとコナン少年は後に語る。


(ってか、童貞殺すセーターって...。)
(...説教、だな。)
(名無しさん、起きてェエ!?何か安室さんが怖いんですけど!!)

(くぴー...。)


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