01/07の日記

19:04
死神四重唱 02
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自分の家のリビングで、少女は居心地の悪さを感じていた。

手首に巻かれて包帯を気にしていれば、目の前のローテーブルにマグカップが置かれる。




「俺特製のホットミルク。って言っても材料はきみの家のだけどね」




そう言っていたずらっ子のように笑う深里に促され、そっと口をつけた。




「………甘い」

「佐藤と蜂蜜がちょっと入ってるんだよね!」

「彩香、さとうの発音違うから。佐藤とか入ってたら僕らもびっくりだから」

「ちょっとしたお茶目です!」

「んなお茶目いらんわ」




容赦なく頭を叩く深里に、躊躇いの文字はない。

少女は再びホットミルクを飲んで、とりあえず現状を把握することにした。


目の前にいるのは死神で

けれど命を狩りにきたのではなくて、むしろ止めようとしていて

その死神たちは既に死んだ人間がなったもので。



「きゃ……!?」

「えへー」




ぐるぐる思考していれば、目の前に笑顔の彩香が顔を出した。

しかもローテーブルに潜って、そこから見上げる形で。

次の瞬間そこを狙ってフォークが落ちる。




「うわっほぉぉぉぉい!?」

「あら、ごめんなさいね。手が滑ったわ」

「あたし死ぬとこだったわ!いや死んでるけど!」

「煩いわね、ケーキおあずけにするわよ」

「ごめんなさい」




素早くテーブルから這い出た彩香は土下座。

梓里は気にすることなくケーキを並べて、




「瑠が作ったケーキはおいしいわよ」




優しく微笑むとそう勧めた。

きゅう、と少女の胃袋が鳴る。

一昨日両親が旅行に出かけてから、一度も食事らしい食事などとっていなかったのだ。

口にしたのは水分と、一袋のスナック菓子にチョコレート。


真っ赤になって俯いた少女を見て、瑠は土鍋を取り出した。




「冷凍のご飯ちょっともらうね。ケーキの前にお粥でも食べなよ」




すみませんありがとうございます、と言いそうになって




(………あれ、私死のうとしてたんじゃなかったっけ)




すごく今さらなことを思い出した少女であった。




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