01/06の日記
11:26
死神四重唱 01
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ひとりの少女が手首を切った。
剃刀で切られたそこから、鮮やかな紅が流れ出る。
少女はぼんやりとそれを眺めて、お湯を満たした浴槽に沈めようとして
「だーめ」
傷より下を掴まれた。
驚いて顔を上げると、黒ずくめの少女がひとり。
「望む通りにしてあげたいけど、それはそれで後悔すると思うしさ」
「ってことでこれも没収ー!」
今度は横から元気な声がして、勢いよく顔をそちらに向けた。
そこにいた少女はウインクすると、瓶の蓋を開けて口を開き、中身を口のなかへ流し込んだ。
大量の睡眠薬がざらざらと少女の胃袋へと収まる図に、慌てて手を伸ばす。
「そ、そんなに一度に飲んだら………!」
「大丈夫、死にやしないわよ。生きてないし」
また新たな少女の声。
剃刀で切られた手首を手際よく手当てしていた。
「こんなのにお金かけるより、趣味とかに使った方が有意義じゃないかな」
何故か浴槽に沈んだ少女が、剃刀とカッターと空き瓶を片付けている。
そう広くもないバスルームは更に狭苦しくなり、少女は呆然と考えていた。
──このひとたち、誰?
締め切ったバスルーム。
自分以外はいない家。
鍵を掛けた窓と玄関。
侵入経路はほとんど無い。
何処からか侵入したのだとしても、突如としてバスルームに現れたのは人間業ではない。
なら、このひとたちは、
「…………しに、がみ?」
ぽつりと呟いた言葉。
少女四人は、肯定するように微笑んだ。
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10:50
死神四重唱 00
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しにがみカルテット
違う時違う日違う場所で、同じ年の少女たちが死んだ。
死因も理由も違うその少女たちの共通点は、死んだという事実。
それから、幽霊にはならなかったと言うこと。
その少女たちは四人並んで、ビルの屋上にある手摺りに座っていた。
生憎の曇り空を見上げながら、実感の湧かない『死後』について考える。
「なぁんで俺ら、こんなことになってんだろうなー」
「世界って不思議だねー。今はあたしらも不思議生物だけど」
「生物とは違うと思うけど……僕らみんな死んでるし」
「これはこれで楽しいけれど、幽霊になれなかったのは惜しいわ」
ぶらぶら、脚を揺らしながら。
生きている同年代の少女たちと変わらない様子で、けれど生きていたらしないような会話を交わす。
これが死神四人の日常だった。
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