意志

□意志
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セレーネの前には、

革命軍参謀総長のサボ、
一応革命軍No.2が…いた。



セレーネは幹部達の部屋係
部屋係と言ってもほぼ雑用下働きの女

彼女は今のところ戦力にもならない為に仕方ないと言えば仕方ない…。
ただ他の人とセレーネは少し違う、隠し名が有ると言う事だ。


セレーネは幹部達のお部屋をまぁ黙々と掃除し衣服など洗濯したり綻びが有れば繕ったりと地味に地味に徹している。
如何して彼女が革命軍に居るのか皆疑問に思っている様だが、彼女の素性を知得る人は革命軍総司令のドラゴンだけである。

そんな彼女にも、コアラは他の革命軍メンバーと同じ様に接してくれている数少ない友達だ。

「ねえ、また明日から私任務に出る事になったの。あっ…そうそうサボ君が貴女に話が有るんだって言っていたわ、何かしらね?」
「何でしょうね、私なんかやらかしちゃったかな?」
「サボ君は、そんな事で貴女を名指しで呼んだりなんかしないと思うよ。」
「そーかなあ?私お情けで革命軍に置いてもらってるよーなヤツだからさぁ。」
「まぁとにかくサボ君の執務室の方に行って頂戴ね。」
「気が進まないけど、仕方ない。行って来るねコアラさん。」


「参謀総長、私です。コアラさんにお聞きして参りました…入ります。」
「あぁー待ってた。」

静かに執務室に入り、ドアの前に立ちサボの言葉を待った。
「ちょっと待っててくれ、直ぐ終わっからな。」
サボは書類に目を通しながら、ペンを走らせたり執務中だったので有る。

「お前を呼んだのは他でも無い…が…ん…」何となく歯切れの悪い口調のサボで有る。

「何か?」と一言言葉を紡いだが…
しばらく執務室に沈黙の空気が流れていた。

「D…の名、お前で10人目か?」
「えっ?」
「ドラゴンさんに、ルフィやエース、ガープのじじい、ローにティーチ、ルージュとロジャーそれにサウロ…そしてお前」
「…」真っ直ぐサボを見つめていた視線が一瞬揺らいだ。

「知らなかったよ、ドラゴンさんに聞くまでお前が何故革命軍メンバーとして此処に居るのか、不思議だったよ」
「不思議…ですかあ、まぁ不詳不出来なヤツですからね…私は下働きの女で充分です。」

「俺なりに、お前の素性や此処に来る迄の経緯を調べてみて驚いたよ。」
「別に驚く程の事でも無いと思いますが、参謀総長」

「お前は…」
「その先は…絶対に言わないで下さい」
キッとサボを睨み鋭い視線を向けた。
嫌だと言わんばかりの表情とオーラ出しまくりで返事をした。
サボは一瞬だが身体が凍りついた様な錯覚を覚えた。
「Dの意志そのものか…」
溜息混じりでサボがポツリと呟いた。

「実際驚いたよ、ドラゴンさんが手元に置きたがる訳だ…革命軍側に。世界をひっくり返せるな。」

「今のままが良いとは思っていない、だから私は此処に来た。ただ…それだけの事です」

「今迄通り名無しで不自由はないから…と言っても参謀総長は私の素性調べたのですから既に名前は知って居るモノと理解します。」

「お話はこれくらいで宜しいでしょうか、参謀総長…私にはやる事が山程ありますので、此れで失礼します。」

「セレーネ…」

ドアノブに手を掛け無言のまま振り返らずサボの執務室を出て行った。

「綺麗な響の名だな、なぁ?セレーネ…」
既に退室し消えて行った扉に向かいサボは、呟いた。

私にはDの意志等どうでも良かった逆に隠さねば生きられないこの世界そのものを憎んでいたのかもしれない、ラフテルと言われたあの場所、ワンピース…に何が有るかなんか興味ない。

「此処に居たのね〜」
コアラが背後から抱きついて来た。

「コアラさん」
「何の話だったの?」
「用と言う程の話じゃなかったわ…」
「ふぅーん」
「あっ、私お掃除行かなきゃ、じやコアラさんまたね。」
セレーネはその場を足早に去った。

実際に革命軍内部ではやる事は沢山有る、参謀総長と無駄口叩いていられる程私は暇じゃないんだ、そー言う会話はドラゴンさんとしたら良いと思うのだった。


その夜
「月が、久しぶりにあんなに輝いて…」

「よお!今夜は月が綺麗だなぁ」

「今晩は、参謀総長」

「今は勤務じゃないんだ、参謀総長はねえだろぅ?」

「ですが…それ以外の呼び名は…」

「あー…だから、サボで良いってんだろ?わかんねぇヤツだなぁお前は。」

「申し訳ありません…」そう言いながら軽くお辞儀をして立ち去ろとしたが、いきなり腕を掴まれた。

「なに!」ガッチリと握るサボの手を振り払おうとしたが無理だった。

「おい逃げるなよ、セレーネお前は俺の力には敵わない。」

昼間サボに向けた視線を再び向けた、しかしそれは昼間の比ではなく、明らかな否定の意志有る視線で有り圧倒的な威圧感を隠さずサボに向け放っていた。

「おまっ…」瞬時にサボは吹き飛ばされ半ば意識を意志ない掛けていた。
「つぅー油断した、俺とした事が…」そう言いながらサボはよろよろと立ち上がり洋服の汚れを叩いていた。

「私に関わらないで、今迄通り接点を作らないで下さい。」冷ややかに感情も無く淡々と言葉を紡ぎサボに言い放った。

サボは、その場に立ち尽くしじっと彼女を見ているだけだった。

どのくらいの沈黙が続いたのだろうか、
月が雲に隠れはじめた頃漸くサボは
「おめぇが、何処の誰か知ったこっちゃねぇよ、唯俺と同じモノを抱え込んでるのはわかる」
「何がわかると言うのよ!話にならないわ。」

「俺は明日から任務だ、どのくらい掛かるかわからねぇが。」

「お見送りはしません。おやすみなさい」

『アレは紛れもなく覇王色の覇気…イヤそれ以上の何かか?ルフィやエース他の奴らの覇王色以上のモノだ、やはり彼女は』


翌日サボ、コアラは任務に出発した。

「ドラゴンさん、私です。」
「あぁ〜入れ」
「どうした?」
「はい…」少しく俯き加減で答えた。

「私は…私は此処革命軍に居て良いのでしょうか」
「此処に居れば良い、何も心配しなくてもいいんだ。あの時…感じたのだよお前の中に有る重く抱え込んでいるモノをな。」

「ドラゴンさん…参謀総長が言って居ました『俺と同じモノを抱え込んでいる』みたいな事を。」
「ん、?サボも気が付いたか自分と同じモノを。」

「…」ドラゴンの執務室に静寂な時間が流れた。

「あっ、仕事に戻ります。」
「あぁ、余り余計な事を考えるな。」
「はい、ドラゴンさん…失礼しました。」静かにドラゴンの執務室を出た。

任務に出たサボとコアラ達の帰還が遅い、また何処の国の港街で遊んでいるのだろうと、私は思っていた。


『あの場所…オハラが解読したと言うポーネグリフとロード・ポーネグリフ等ほんのうわべだけの話だ。ゴール・D・ロジャーは旅の最終地点ラフテル迄到達した…そして、今の時代誰かが最終地点に到達したその時私が必要になる、そこがロジャーとの違いだ』

薄っすらと空に浮かぶ真昼の月を見上げながら私は考えていた。

「よぉ〜何やってんだズットそんな処で」
ふっと背後から彼女に声を掛ける人物がいた。
彼女は気配の無い声の主を探した。
「参謀総長…任務お疲れ様でした。」
軽くお辞儀をして立ち去ろとしたらまた、腕を掴まれた。

「何でそういつもおめえは、俺から逃げようとすんだ、同じ革命軍の仲間だろぅが?」
「離して下さい」
「離さねぇよ」
「おめえ、天竜人…世界貴族か?」
「なんで?」
「違うんかぁ…?」
「違います…一緒になんかしないで下さいあんな腐った世界貴族なんかと。」吐き棄てる様に言った。
「あぁーそうだなぁ、俺と同じだな。貴族は腐ったヤツばかりだよなぁ」
「…」

乾いた風が2人の廻りに吹いた。

「もう聞かねぇよ。なんでおめえが此処に居て何処へ向かおうとしている事…いずれわかる事だからな。ただ1つだけ良いか?」
私は首を傾げた。
「セレーネと呼んで良いか?」

「イヤです、私の名じゃない。」
「即答だなぁ、じゃなんで呼べば良いいんだ?おめえは確かにセレーネだ。」

「だからそんな名前知らない」
完全な拒否の意思をサボに向けた、サボは余りに圧倒的なチカラに打ちのめされた様にその場に倒れ込んでしまった。
ピンと張り詰めた空気、ナニモノをも寄せ付けさせない絶対的な威圧感が倒れているサボの周囲に渦巻いていた。

そんな空気の流れの変化に気が付いた革命軍のメンバー達が何事かと集まって来たが、近付く事も出来ずただ見守るしかなかった。

そんな最中、司令官であるドラゴンが、躊躇なくサボに近寄り抱き上げ、私にも付いて来いと促され医務室に向かった。

「何があったとは、聞かないが…まぁ大体察しは付く。」
「ドラゴンさん…」
「まぁ良い、意識が戻ったら私の執務室迄来る様にサボに伝えろ。」
「はい」医務室の看護師は答えた。

数時間後漸く目を覚ましたサボは、ドラゴンの執務室に居た。

「サボ、焦るな。」
「俺が焦ってる?」
「あぁ」
「彼女には必要以上に関わるなと、言っておいた筈だが…」
「はい。」嫌だと言わんばかりの表情とオーラ出しまくりで返事をした。
「…ですがドラゴンさん…彼女は…」
「あぁ、彼女は世界の鍵だ。ほんの些細な感情の変化で神にも悪魔にもなり得る。」

「さっきのアレ…ですか?」
「そうだ。」
「然し…アレは人のモノでは無い様に感じました。」
「だろうな、彼女は古代兵器以上の力を持つモノだ。」
「ポセイドン、ウラヌス、プルトン以上の?…そんな事有り得ない…!有ってたまるかよぉ」



彼女は部屋に戻り寝込んでしまった、コアラが付きっ切りで傍に居てくれたのは、目が覚めた時本当に嬉しかった。

「コアラさん、ずっとついていてくれて有難う」ぺこりと頭を下げた私にコアラは、
「サボ君が、また貴女に何かチョッカイ出したのね、大丈夫だった?心配だわ…もう少し寝ていてね。」
「有難う、コアラさん」と言ながら私はまた深い眠りに落ちて行った。

「サボ君…チョッ〜とぉ来なさいよ、アンタ何したの?」
「へっ?あっコアラ!違うよ」
「違うじゃ無い!彼女の疲れ方は尋常じゃ無いくらい深く疲労している、ドラゴンさんがアナタを拾いに行くのがもう少し遅かったら彼女自身どうなっていたか?よーく考えてよねサボ君!いい?わかった?」
「俺を拾いに?ってコアラ!俺は…」
「…あんまり騒ぎ起こさないでね。」
「…」

『なんなんだ…よぉ、え?おぃ』
サボは、自分が倒れ込んだ場所に戻り彼女の居た場所に立ち空を見上げた。

月は出ていないが、満天の星空は息を飲む程に美しく見えた。
『そー言えば彼女はいつも昼夜関係なく空を見上げてるが…なんの為だ?』
サボはその場に寝そべりじっと星空を観ていた。

いつの間にか寝入ってしまったらしいのかサボはシルクハットで顔を覆っていた。

その傍にセレーネが立ち空を見上げていた。
多分参謀総長は、彼女の気配に気が付いていたと思うが、じっと動かず寝たフリをしていた。

「…」

『ん?』サボは聞き耳を立てた。

「…」

『何を言ってるんだ、セレーネは』

「変わらず…」

『えっ?』

「変わらず輝いている…数百年変わらず輝いている…でも…私は」彼女の頬を一筋の涙が流れていた。

「セレーネ…おめぇ」
「参謀総長…左目の火傷の傷痕は天竜人から受けた傷だったんですね、ドラゴンさんから聞きました。」小さく囁く様な空気に溶け込みそうな声ではじめてサボに言葉を紡いだ。
「あぁ、」
「私…私の一族はもう居ません。私独りきりです。」
「えっ?…天竜人にか?」
「それも 有りますが…」目を伏せ俯いた。サボは黙ったまま夜空を見上げた。

「本来私は人と接点を作らないと自分に言い聞かせていました。」
「…」
「ごめんなさい、これ以上は言えない」
「わかってる、言わなくて良い。」

「おめぇは、俺なんかよりもずっと重い過酷なナニカを背負っているんだな。」
「…」
張り詰めていた糸が少しだけ緩んだのかセレーネは、その場に崩れる様に倒れたが、寸でのところでサボに抱き寄せられ倒れ込むことは無かった、そのまま抱き抱えセレーネの自室のベッドに寝かせた。

『そぉーだなぁ、焦る必要なんかねぇんだな…セレーネ』

それから幾月が、過ぎた。
表面上は穏やかな世界そのものであるかの様な静けさであった。

セレーネは、相変わらず下働き女として地味に地味に毎日を過ごしていた。
サボは世界中に散らばっているメンバー達からの連絡を基に世界の動向を監視していた。

「サボ君いるぅ〜?」コアラがノックしながらサボの自室に入って来た。
「なんだぁ?コアラ…どうした。」
ベットにどかっと寝そべり天井を見つめながら返事をした。

「彼女が…」
「彼女がどうした⁈」サボは勢い良く起き上がりコアラの肩をガッツリ掴んだ。
「落ち着いてよね〜サボ君」
「スッゴい反応だね〜え、え?サボ君」

「ドラゴンさんの処に行ってね。」
サボは着替えをして直ぐにドラゴンの執務室にむかった。

「サボです」
「あぁ、入れ」
室内には、セレーネがいたが、いつもの下働き用の服装ではなかった、その姿に面喰らったサボは暫し呆気にとられていた。

「彼女は、此の姿で遥か過去より仮死状態で眠っていた…」
その姿はいつもの彼女からは想像も出来ぬくらいの変わり様にただただ驚くばかりであった。

「アラバスタ王家もドンキホーテ家も同じ…マリージョアに住む天竜人だ」
彼女は俯き瞼を閉じた。

「もしかしたら…サボ 貴方も…」

「え?俺がか?…冗談ぽい俺は唯の平凡な貴族の息子だ!」
「そう かしら?」
「えっ?」

「まぁいずれわかる事だと思うから、まぁ良い。」
「私は特殊な脳波の波長を感じる事ができます、覇動の波の様なモノとでも言えば良いのか…。」
更に、
「武装色、見聞色、覇王色そして…覇王色の更に上の覇気がありますが、超能力みたいなモノに例えられています。が殆どの方々は覚醒する事なく一生を終えます
。」

「私が目覚めたという事は、此の世に存在すると…の、証」
「誰なんだ…」
「わかりません」
「覇気を使う方々全て…がしかし、Dが名前に付いている方の方が…更に…」

「私の名前は、リューヌ・セレーネ」

静かな空気が流れた、彼女の穏やかな気持ちそのものであるかの様だった。
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