風の歌姫(大地の汽笛)
□見習い機関士と風の歌姫と王女
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遂に任命式の日がきた。ここの警備は無駄に凄いからね。任命される子が通れなくて困ってそう。
「そ、そんな〜!?」
やっぱり。私は予想通りの現実に呆れながらも、声が聞こえた方に向かう。声がした方に目を向けると、私は目を見開いてしまった。
そこに居たのはリンクだった。今すぐ駆け寄ろうかと思ったが、あのリンクは私が愛したリンクでは無い。私と彼との子孫なのだ。
それなのに見た目がリンクそのものだった。唯一違うものといえば服装が緑衣ではなく、機関士が着る服だった。
リンクの姿に驚いていた私だが、我に返る。早く通してあげないといけないと思い、私はその警備員に近づいく。
「どうかした? 騒がしいけど……」
「これはリュア様! は! こやつがゼルダ姫に用があると申して降りまして!」
そういわれてリンクを見る。私が愛した人と全く同じ顔。本当に私の血を受け継いでいるのか心配になったが、今はそれどころではない。
「この方は今日の任命式の機関士見習いです。機関士見習い、任命式はこの上で行います。ついて来てください。警備員、そこを避けてくれませんか?」
「は!」
警備員はどいてくれた。そのことを確認した私は、隣にいるリンクを見て自己紹介をする。
「申し遅れました。私はリュア。貴方は……?」
聞かなくてもわかるけど、おかしな人だと思われるからちゃんと聞かないと。彼の口から出た言葉は予想通りのものだった。
「俺はリンク! よろしくな!」
やはり名前もリンクなんだ。きっと、繋がっているからなんて理由で同じ名前にしたのかもしれない。私は一度頭を下げてからリンクを見る。
「それではついて来てください」
私はリンクに話すと先に階段を上った。謁見の間につくと、任命式を始めるためにリンクを誘導した。
「では、リンク……ゼルダ姫が来るまでここでひざまずいてください」
リンクがひざまずくと私はジイの隣に並ぶ。そしてゼルダが入って来て、リンクの前に立つ。
何も言われていないのに、リンクは顔を上げる。すると、リンクはほんのりと頬を少し赤くする。そんなリンクを見てゼルダは微笑んだ。
「許しもなく顔を上げるとは……無礼ですよ小僧!」
ゼルダが怒ってるキマロキに手を向ける。そしてリンクを再び見た。
「そんなにかしこまらないでください……貴方が新たに機関士になるかたですね? 名前を聞かせて下さいますか?」
「リンク……です」
「……リンク。素敵なお名前ですね。リンク、貴方は……」
ゼルダがリンクに何かを言おうとしたが、大臣であるキマロキがわざとらしく大きな咳ばらいをした。
「姫様、無駄な言葉は必要ありません! お早く任命式をおすませ下さい」
キマロキの言葉を聞いたゼルダは悲しそうに見る。そして大きな溜息をついて、キマロキを見つめた。
「……わかりました大臣」
キマロキの思い通りには絶対にさせない。そう思っていると、私の隣にいたジイがゼルダに任命書を持って行く。
「ありがとうジイ。リンク……? 貴方を我が国の機関士に任命します。この国と民の為に精励されることを期待しています」
任命書を読み上げたゼルダからリンクは任命書を受け取る。私は退場するゼルダを見送る。すると、キマロキがリンクに話し掛けた。
「小僧いつまでそこにいるつもりですか? 用が済んだのです。早く帰って大事な汽車でも磨いてなさい。……もっとも……すぐに、役にたたなくなるんだがな。リュアも持ち場に戻ってください」
「私はゼルダ姫にリンクを見送るよう言われています」
私がそういうとキマロキは呆れた顔してこの部屋から出た。階段を降りるとリンクに手紙を渡した。
「ゼルダ姫からです。貴方にしか頼めないそうなので……読んでください」
私はリンクから離れて違うところに行って戦闘用服に着替えた。