風の歌姫(夢幻の砂時計)
□ゴロン族とハガネ
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私が目を覚ますと、部屋の自分のベッドで寝ていた。服装は海王の神殿の中に行った時と同じだった。
目を擦り、ベッドから降りる。通路へ通づる扉を開けるが、真っ暗だ。
廊下の火が付いていないということは、もう夜中だということが分かる。
「そっか……私、時の砂がないまま海王の神殿に潜り込んだから……」
昼に起きた出来事を思い出す。なんだか、リンクには申し訳ないことをしたなぁと思った。
身体は、洗ってないからベタベタする。私は着替えを持ってシャワー室に足を運ぶ。
ボーッとしながらも、水を浴びる。体や髪の毛を拭いてシャワー室から出る。
服を着た私は、どこにいるか場所を確認するために船から出た。
「……あれ? ここ、メルカ島じゃない」
外に出てみたところ、赤っぽい色をしたコンクリートをした土地の島だった。
そこらに丸まった黄色っぽいオレンジをした岩が動いている。
「これが……あのゴロン族…!!」
1年前、ハイラル城でスカイから貰った魔導書に書いてあったあのゴロン族だ。
今すぐ話したいが、迷惑そうなのでやめておく。
私は船の中に入り、リビングに行く。椅子に腰掛けて、テーブルの上にあった本を手に取る。
パラパラーとめくって見た感じ、勇者が人間にもどったり、獣になったりして魔物になった影の王女と共に世界を救うという話だった。
「なんか面白そう!」
私は夜が明けるまで、その本を読んでいた。
本を読んでいると扉が開いた。入って来たのは欠伸をして口を手で抑えているダークだ。
まだ、眠そうな顔をしている。そんなダークに私は声をかける。
「おはよーダーク」
「おはー……!?」
私の声に気づいた眠たそうなダークが、やっと目を覚ました。
「お、お前、いつからそこに……!?」
「うーんとね……夜中からずーっと」
「ずっとか!?」
ダークは口をあんぐりと開けている。そんな姿のダークを見て、私は笑う。
「大丈夫だよ! たっぷり寝たから!」
私は再び、本に視線を戻した。ダークは、私が読んでいる本を見てまた驚く。
「おいそれ、どこで手に入れたんだ!影の世界じゃあ大人気のベストセラーで入手困難な本なんだぞ!」
そ、そうなんだ……。
私はそう思い、ダークを見て苦笑いをする。そんな時、ラインバックが入って来た。
「お前ら、早いな……」
ふと、私はこの本はラインバックがどこかで手に入れたのだろうと考え、聞いてみる。
「ねぇ、ラインバック……これ、ラインバックの本だよね?」
私はこの本をさして聞くと、ラインバックは頷いた。
「あ、ああ……そうだが?」
「どこで手に入れたの?」
聞いてみると、ラインバックは視線を宙に這わせる。ドキドキしながら私達はラインバックの答えるのを待つ。
「あ、普通にメルカ島の雑貨屋で売ってた気がするぜ」
「……え?」
私達のすっとぼけたような声が重なった。影の世界じゃ売れきれて買えないのに、こっちだと普通に売ってんの?
「そ、それじゃ俺の今までの楽しみは……!」
相当ショックだったのか、ダークは手と膝を床について泣きつく。そんなダークの肩に手を置いて、じーっと見つめる。
「この世界で買って皆に自慢すればいい!」
「……そうだな」
ダークはなんとも言えない顔をしていた。