風の歌姫(風のタクト)

□魔獣島へ
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「これなら髪の毛の長いリュアでも、男に見えるね」


 長かった髪の毛は、ショートになった。メイクもして男子っぽく見せていたが、魔獣島に入るにはリンクのように樽に入って同じことをしないといけないんだよな……。


「別にいいと思うけど、魔獣島に入る時に海に入らないといけないんだが……」

「それなら問題ないと思うけど」


 僕はテトラの言葉に驚いた。テトラの顔を見ると、いつもの表情をしている。


「髪型もショートのアシメにして片目を隠しているし、メイクが落ちてもリュアならメイクをすることができるだろう?」

「ま、まあ……タウラ島にいる友達にたまーに頼まれるからね」


 プロロ島に住むようになってからは、その子が寂しがっているんだよね。

 この前も手紙をもらって【リュアのメイク……今度タウラ島に来た時にまたお願いできます?】って書いてあったんだよね。

 まあ、彼女らしいからいいんだけどね。たしか、その手紙をもらったのは2週間くらい前だったような……。今はどうでもいいか。


「それなら問題ないね。リュアも、リンクのようにぶっ飛ばすからね」


 僕は船の外に出てリンクと同じように樽に入る。リンクのように失敗しないようにテトラちゃんから、どうすればいいかを聞く。

 テトラ曰く、途中で樽から出るのがいいらしい。僕も覚悟を決めてテトラに合図を送る。

 思い出したのか、テトラはポケットから海賊のお守りを取り出して僕に渡した。

 僕はそれを受け取って、ポケットに突っ込む。準備ができたので、僕の合図を送る。テトラちゃんが指示を出して海賊船から撃ち出された。


「うわあああ!?」


 声を出しながらも、樽から出る。水が見えたところで僕は樽から降りた。水に飛び込む。


 バシャーンッ!!


 大きな水しぶきとと共に音を立てた。僕は泳いで陸に上がる。

 すると、ついさっき貰ったばっかりの海賊のお守りが光った。僕はそれを手に取る。


『リュアは上手く着地が出来たようだね。リンクは近くの樽に隠れているよ』

「そうなの? 僕が持っているこれでも話せるよね」

『もちろん。困ったことがあれば、また後で聞くんだよ』


 石の輝きがなくなった。僕は石を使ってリンクを探す。


『な、なんだ……リュアか。近くにいるから待ってろ』

「早くしろよ」


 僕は石をポケットにしまった。しばらくすると、樽が動いてきた。


 もしかして、これがリンクなのか?


 そう思っていると、リンクが樽の中から出てきた。


「……なんで樽の中に入ってんだ?」

「そうじゃないと、あのサーチライトに見つかってしまうんだよ」


 そうなのか。アリルを助けに行くのも簡単じゃないな。僕も近くにあった樽を被って、リンクの後に続いた。

 サーチライトが当たらないところで樽から出た。あのサーチライトを止めることはできないのだろうか?


「リュアが来る前に、魔獣島を探索していたら、サーチライトに見つかったんだ。それで牢屋に捕まっていたんだ」


 そうなのか……。僕たちは一度、地図を見てみる。似たような部屋が多く、紛らわしかった。リンクが2階の地図の扉が3つある部屋を指さした。


「ここからアリルが捕まっている部屋にいけるらしんだが……」

「どうした? サーチライトを止めないと、先に進めないって感じか?」


 僕がリンクに聞いてみると、視線を外して頷いた。


「……そうだ。それじゃあ、俺はこっちから回っていくから行くから、リュアはこっちから回って、サーチライトを止めてほしいんだ」

「分かった」


 リンクが扉を向かって行く。見送っていた僕だが、リンクが剣を持っていないことを思い出す。


「お、おいリンク……って、もう行っちゃったか……」


 行ってしまったものは仕方ない。僕はため息をついて、リンクとは別の道を通ってサーチライトを止めに行った。
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