風の歌姫(夢幻の砂時計)
□プロローグ
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私はニコが作った紙芝居を見ていた。彼の作った紙芝居には少しアレンジしてあったが、だいたいあっていた。私は正座をしてリンクに膝枕をしていた。
「どうだい オイラの作った伝説の紙芝居"テトラ様はゼルダ姫だった!"よくできているだろ?」
ニコに聞かれたので私は紙芝居の出来を褒めた。
「よく出来ているよ!」
私が言うとニコが紙芝居をお腹ぐらいの所まで下げて私達を見た。
「すごいだろ! ……あっ! リンク、なに寝てるんだよ!」
そういうと私の膝で寝ていたリンクが目を覚ました。と、思ったらリンクがびっくりしていた。
リンクが思いっ切り頭をあげたので私の頭にもぶつかってしまった。
「あ、リュアごめん……何で膝枕されてたんだ?」
「リンクがニコの紙芝居を見ているときに私の肩に頭のっけて寝ていたから、膝枕したんだよ!」
肩に頭をのせられるといたくなるので膝枕に変えたのだ。
「いいよな〜リンクは! 可愛い彼女のふにふにした太ももで寝ることができて!」
「んな!?」
ニコにそういわれて私は顔を赤くする。リンクを見ると、どや顔しながらニコを見ている。
「羨ましいだろ!!」
リンクがそう言って目が合う。私は恥ずかしくて、すぐに目をそらしてしまう。
「リンクーっ! リンクーっ!!」
テトラがリンクを呼ぶ声が聞こえた。私が、声が聞こえた方を見ると、テトラがキョロキョロしながらリンクを探していた。
彼女が私に膝枕されているリンクに気づくとすぐこちらに来た。
「こんなとこで遊んでんじゃないよ! しっかり見張り番するんだよ!」
リンクが体を起こすと、頭が後ろに来ていた。簡単にいえば、座っている状態で上を見ている感じだ。
「まったくだらしないんだから! 魔王を倒してアタシを助けた勇者だなんて思えないね」
テトラがそういうと、モッコが呼ぶ声が聞こえた。モッコは壊れた眼鏡をかけて語尾に"デスナ"という人だ。
「ゼルダ姫様〜そろそろ例の海域ですよー」
「こら〜ゼルダって呼ぶなってない言ってるだろ! いままで通り"テトラ"か"アネキ"って呼びな」
テトラちゃんはありなのかな? なんか言われそうだからやめよっと。
「そんなことより! ここが"幽霊船"の出るって噂の海域なんだろ? それらしい船が、見えないかしっかり探すんだ!」
そう言ったテトラに対して、下っ端のニコが反論する。
「やっぱりやめましょうよ! ここってたくさんの船が行方不明になっているんですよね? 絶対その幽霊船のしわざですよ〜」
「そうだよニコ! このあたりを通る船はみーんなこわーい幽霊船に連れて行かれちゃうんだ〜」
みんなとか、こわいをわざと伸ばして言っているテトラが可愛い! テトラの隣にいるニコがフルフル震えて言う。
「ひ〜っ! おいら、幽霊は苦手だよ〜」
そんなニコも可愛いと思う! だけど、個人的な感想を言うと、それだからずっと下っ端だと思うよね。
上からゴンゾがやってきて私達の話に入ってくる。
「でもアネキー。前の港で聞いた話じゃぁここは海王って大妖精が、治めてる海って言うじゃないですか? そんな精霊様がいる海で、なんで船が行方不明になっちまったりするんです?本当に幽霊船がいたりして……」
確かに、この前止まった港ではそんな話をよく聞いた。ナンパされたけど。リンクが助けに来てくれたから大丈夫だったけど……。
「だらしないこと言うんじゃないよ! だいたい幽霊船なんていやしないんだ。どうせ、どっかのあくどい海賊が悪さをしているに決まってるよ! アタシが正体をあばいて海賊にもルールってもんがあるのを教えてやるよ! それに、その海王って大精霊も本当にいるか怪しいもんだよ!」
テトラが言い終わった瞬間、私はなにかを感じた。
「テ、テトラ? 雰囲気が変わったんだけど!?」
「うわぁぁほらほらー。なんだか幽霊でも出そうな雰囲気になって来ましたよぉ。こんなおっかなそうなところやめて回り道しましょうよ!」
こ、今回はニコの意見に賛成する! ヤバいんだけど!!
「バカいうんじゃないよ。世界を回ろうってのに回り道なんかできるか!」