風の歌姫(風のタクト)
□プロローグ
6ページ/7ページ
「なんだって!? 私達の船に乗りたい?」
「うん!」
僕達は一緒に返事をする。僕がアリルと一緒にいてあげれば、こんなこと起きなかった。
「アンタら、わかってんのかい? 私達は海賊だよ! 何のとりえも無いチビッコを乗せてなんの得があるのさ?」
僕にはとりえがあるのに。とは言えず、僕はテトラちゃんに忘れられていることが悲しくなって俯いた。
「アンタの妹をさらわれて後を追いかけたい気持ちはわかるけど……それは、私達とは何も関係もない話だろ?」
そ、そういわれてしまうと、リンクはテトラと関係ないので言い返せなくもないな。すると乱入者が入って来た。
「そいつは、どうかな……?」
この声は、この島によく手紙を届けてくれるリト族の……。
「オドリーさん!」
「おう、おう、おう! 何だ〜お前! 横から口出しすんじゃねえよ!」
てか、お前が誰だよ! その時、僕は全く関係ないことを思っている。
「何、俺が言いたいのはお前さんさえ、この島に来なけりゃ、あの子がさらわれる事も無かっただろうっ事さ……」
あ、確かに。あ、でもそれじゃあ、テトラちゃんに失礼か。
「それは、どういう意味だい?」
まさかの理解出来てなかったテトラちゃん。
「まぁ、聞けよ! 俺は仕事がら手紙を配達しているからいろんな島に行くんだが……。最近、各地で娘が誘拐されるって話を聞いたことないか?」
そう言われて、タウラ島での出来事を思い出す。この前、遊びに帰ってきていたが、ムールとマギーが行方不明になったと聞いた。
「何でも、誘拐されているのはお前さんみたいに耳の長い娘だって話だ。それに確か、さらわれたあの子も耳が長かったよな……? だからさ、あの鳥はお前さんと間違えてあの子をさらったんだよ!」
えぇ!? 肌の色とか、髪型で分かると思うんだけど。意外と、あの鳥ってバカなのかも。
「……」
あ、テトラちゃん静かになった。
「それに、森でバケモノ達からお前さんを助けてくれたのはこのリンクとリュアなんだぜ!」
「それは本当かい?」
テトラちゃんが質問してきた。
「本当だ!」
オドリーさんが補足の様に言葉を付け足して言う。
「ついでに言うとあのデカイ鳥は北の方にある魔獣島を根城しているらしいぜ!」
「魔獣島!?」
「魔獣島って……」
「あの!?」
タウラ島に帰って町の人から聞いたけど、本当だったの!?
「どうする? ここは行き掛かり上、この2人に力を貸してやるのが筋じゃないのかい?」
オドリーさん説得力パネェッスよ! そういうところマジ尊敬できる。
「クッ……アンタに言われなくてもそうするつもりだったのさ!」
ま、まさかのツンデレ!? 新発見だぞこれは!
「魔獣島ってとこは最近、不気味な噂が耐えない場所さ。まさか、そんなチンケな剣だけで乗り込もうなんて、本気で思っているんじゃないだろうね?」
「ええ!? そうじゃないの!?」
「オイ!」
ボケていたリンクの頭を叩くと、テトラちゃんが少し呆れながら口を開く。
「こ、こんな平和な島にだって自分の身を守る盾になる物ぐらいあるだろ? そいつを手に入れて来たら船に乗せてやるよ。それと、言っとくけど一旦船に乗ったらしばらくは帰って来れないからね。親を悲しませないようにちゃんと挨拶してくるんだよ!」
そう言われると、リンクにはこころ当たりがあるのか、すぐさま家に帰って行った。