book.

□最強な彼とバレンタイン
1ページ/1ページ




「フォルテ、チョコレートフォンデュ食べよう!」
「チョコレ…なんだ」
「チョコレートフォンデュ!苺とかマシュマロなどに、チョコを付けて食べるの」
「ほう…。それは美味いのか?」
「すごく美味しいよ!自分の好きな物にチョコを付けて食べれるから楽しいんだよ」

トロトロのチョコレートが入った器をテーブルの真ん中に置くと、フォルテは興味津々にそれを見つめた。
チョコレートの傍らに苺やマシュマロ、バナナなどが乗せられた皿を置くと、さらに興味が強くなった。

「どうやって食べるんだ?」
「こうやって食べるの」

フォルテに手本を見せるように、フォークで苺を刺してチョコレートにくぐらせてから、垂れないうちに口に運んだ。
口に広がる、チョコレートの甘さと苺の甘酸っぱさに頬が緩む。
「…こんな感じ。フォルテも食べて食べて!」
「ふむ…。この丸いのはなんだ?」
「これはシュークリームだよ。中にはカスタードクリームとワサビが入ってるよ」
「なぜ、ワサビが入っている」
「ロシアンルーレットみたいで楽しいから」
「馬鹿か」

フォルテはマシュマロを選びチョコレートを付けて、口に運んだ。
さすがに一発目からワサビ入りシュークリームは食べたくないよね。

「どう?」
「…美味い」
「えへへ、良かった!」

気に召したようで何よりだ。
それからフォルテは、バナナを食べ、また美味いと呟いた。
見かけによらず甘党な彼は、次々に食べていく。

「このオレンジも悪くないな」
「でしょ。意外と美味しいんだよね」

わたしはシュークリームにチョコを付けながら答え、口に運んだ。

「…っ!!」
「どうした?」
「〜〜っ!!」
「…ワサビを食ったのか。自業自得だ」
涙目になりながら悶えるわたしを呆れた顔で見るフォルテ。
まさか、自分で仕掛けた物に引っ掛かるとは思わなかった。

「…っはあ。ワサビ入れすぎた…」
「俺は食わんからな。貴様が責任取って全部食え」
「そ、そんなー…」

苺を口に運んだフォルテにそう言われ、落胆する。
一人で地獄のチョコレートフォンデュをするハメになってしまい、顔が引きつった。

「仕方ない…。自分で蒔いた種だし、食べるか」

なるべく、ワサビが入ってないやつを選んで口に運んだ。
けど、またしてもワサビ入りで悶絶。
わたしの様子を見ながら、フォルテはニヤニヤと笑っていた。ここに鬼がいる!
それから、本気で泣きながらシュークリームを食べ終わり、紅茶をがぶ飲みした。
せっかくのチョコレートフォンデュがもったいない。
フォルテも満足したみたいで、いつもより表情が柔らかい。

「初のチョコレートフォンデュどうだった?」
「悪くなかった」
「気に入ったみたいで嬉しいよ」
「だが、いちいち串に刺して食べるのは手間だ」
「えー、それがチョコレートフォンデュの醍醐味なんだけどなあ」
「…そう言うものなのか」
「そう言うものなんです」

雰囲気が柔らかいフォルテを見て、たまにはこういうのも悪くないなと思いながら、わたしは笑った。
でも、今度はワサビを入れるのはやめようと心に誓った、バレンタインでした。


-fin-


[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ