book.
□この恋、きみ色
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「好きです、付き合ってください!」
そんな声が聞こえて、わたしは足を止めた。
セリフからして告白のシーンに出くわしてしまったみたいだ。
おかげで西棟に行けなくなったわたしは、何を思ったか曲がり角に隠れて様子を伺う事にした。
すごいなー、よく告白なんてできるよね。いつ人が来るのかわかんないのに、恥ずかしくないのかな。
なんて、他人事の様に思ったら、耳を疑う声が聞こえた。
「えっと…、ごめん」
あれ、エックス?この声エックスだよね?
悪い気はしたけど、気にはなるから少しだけ身を乗り出して覗いてみる。
見えたのは、顔が真っ赤な美女と申し訳なさそうな顔の男子。
やっぱりエックスで、告白した美女は隣のクラスの可愛いと噂の子だった。
でも、エックスはその子を振ったよね?
まじか、エックス。もったいない。
わたしが男なら即OKレベルの美女なのに。どうして?
「おれ、他に好きな子が居るから…」
What!?
ちょっと待てエックスさん。
それはユリちゃん初耳だぞ。
君、好きな人が居たのか!
ほら、美女もびっくりしてるよ!
じゃあ、エックスは誰が好きなんだろ?
「もしかして、羽生さん?」
「そう。…だから、ごめん」
え、羽生?わたしの名字?…と、言うことは……
気づいたらわたしは、あの曲がり角じゃなくてゼロとアクセルの所にいて、さっきまでの体験の詳細を伝えてた。
粗方説明は終わって近くにあった机に座る。
エックスがいたら怒られるけど、そんなこと今はどうでもいい。
「エックスって、わたしのこと好きなの…?」
こっちが大事なのだ。
わたしが生きてきた人生で受験よりも難しい問題だ。
まさか、あのエックスがわたしのこと好きとか考えもしない。
当然わたし一人じゃ解決出来っこない。
だから目の前のイケメンな先輩と美少年な後輩に聞いたのだけど…
「「ようやく気づいたの(か)」」
揃って同じ回答が返ってきた。
しかも微妙に呆れ顔。解せぬ。
「じゃあ、二人はいつから知ってたの?」
「俺は、半年くらい前だった」
「僕は、入学式の二日後くらいにはわかったよ」
「へ、へぇ…」
アクセル、それは早すぎると思うけど、君なら納得できるよ。