book.

□不意打ち
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ふと、目が覚めた。

見慣れた天井があって、視界は暗く、まだ日が登っていないことがわかった。

「…ユリ、どうした」

枕元に置いておいた時計を見ようと体を動かしたら、声をかけられた。

「フォルテ…。ごめん、起こしちゃったね」
「謝るくらいならさっさと寝ろ」

PETの中で後ろを向いた所為で顔が見えなくなってしまった。
少し言葉が厳しいけど、わたしを気遣っての言葉なのを知っている。

顔には出さないが、彼は心配性で優しいのだ。

「…ねぇ、フォルテ」
「なんだ」

いつもは返事が返ってこないのに、今回は違って驚いた。
次の言葉を急かすかのように、舌打ちが聞こえ、なんだかそれがおかしくて笑ってしまった。
それが癇に触ったのか、PETの中から物凄い殺気が伝わってきて慌てて言葉を紡いだ。

「フォルテは、優しいね」
「…貴様、消すぞ」
「ごめんごめん」

端から見れば物騒な会話だけど、わたしからしたらいつものこと。
フォルテはいつも、照れ隠しでわたしを消そうとするのだ。

そんな彼が可愛くて心の中でまた笑った。

いつの間にかフォルテは、コピーロイドに自らプラグインしていた。

不審に思っていたら、手を握ったり開いたり動作確認した後、彼は躊躇いもなくわたしが寝ているベッドの中に入ってきた。

「え、ちょ、どうしたの」
「…添い寝をすると眠りやすくなると聞いた」

いきなりのことに困惑していると、頭上からくぐもった声が聞こえ理解する。

うん、確かに温かい。
わたしも腕をフォルテの身体に回して抱きつくと、ぎこちなくだけど頭を撫でられた。

しばらくして、少しずつ微睡んできた。
そのまま眠ってしまおうとしたら

「…俺が、ユリを守ってやる」

そうフォルテが言った。

いつもなら絶対に言わない言葉が嬉しくて、少しだけ腕に力込めた。

「やっぱり、フォルテは優しいね」
「うるさい。黙って寝ろ」

一喝されたので大人しく寝ることにした。

明日、添い寝をしてくれたお礼と一緒に、いつも守ってくれてありがとう。なんて言ったら彼はどんな反応をするだろうか。
それを楽しみに思いながら、わたしは微睡みに身を任せた。


*fin.


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