short(dream)
□私の王子様【大野智】
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*
ガチャ
玄関の扉が開く音が聞こえた。
「ただいま〜。」
何食わぬ顔でリビングに入ってくる智くんの姿を見ると、一日中泣いてた自分が馬鹿みたいに思えてくる。
「…おかえり。」
ちらっと智くんの顔を見ると、「楽しかった
」と余韻に浸るようにニヤつきながらテレビを見ていた。
「良かったねぇ、楽しかったみたいで。」
「そりゃ、まぁ。…え?」
「え?じゃないっしょ。こんな夜遅くまで翔くんと2人で何してたんだか。本当に私の事何も考えてくれない。」
ダメ、涙が出ちゃう。
「いや、今日俺は…」
「え?何?翔くんと会うって言ってたよね?嘘なの?…まさか他の女の人と…」
「だぁーー!違う!!!」
両腕を掴まれ、泣き喚く私に智くんは優しい声で「落ち着いて」と囁いた。
「今日俺、遊びに行ってたわけじゃないよ。これ買いに行ってたの。」
そう言いながら、カバンから取り出したのは小さな箱。
私は頭にはてなを浮かべて首をかしげる。
ゆっくりと顔を近づけると、目の前で智くんがパカっと箱を開いた。
「…指輪?…あ」
「今日はヤッターマンと俺の一年記念日でしょ?だから、その…ゆびわ。
私と智くんが付き合って間もない頃、私たちはこんな会話をした。
"「一年記念日は、指輪が欲しいな。そこで智くんに言ってもらえたら…」"
"「なにを?」"
"「何をってそりゃもちろん…」"
鼓動が速くなる。
まさか本当に智くんに…
「ヤッターマン」
顔を上げると、目が合う。
「僕と結婚してくだしゃい。」
ズコッ
噛む?!そこで噛む?!
「…ぷはっ」
思わず吹き出してしまう。
智くんを見ると、「あれぇ?」と首を傾げている。
「うん、いい。凄くいい。」
私は智くんに抱きついた。
決まらなかったけど、これも智くんっぽいよね。
「ね、これ。左手に付けてよ。」
左手を差し出すと、智くんは微笑みゆっくりと私の手にはめた。
「…ごめんね。最近まともに連絡返せなくて。」
「何よ、突然」
「いや、その…俺こういうサプライズとか分かんないから、翔ちゃんに相談してたの。それで仕事の合間とかに指輪見に行ったりしててさ。まともに連絡できなかった。」
そうだったんだ…
私のために…。
「ううん、私こそ強く当たってごめんね。その…智くんが一年前の事覚えてくれててすっごく嬉しかった!!連絡とかもこれに限らず全然後回しにしてくれても……きゃっ」
突然抱き寄せられ、心臓が飛び跳ねる。
「さっきの返事聞いてない。」
「へ、返事?」
「うん。」
「そ、それはっ…もちろん…こちらこそよろしくお願いしましゅ。」
わざと噛んだように言うと、智くんは少しムッとしたような顔をした。
そんな顔を見るとまた笑いがこみ上げてくる。
「もう!ヤッターマン、大好き」
すると、智くんの唇が優しく重なる。
突然の大好きはズルい。
もう心臓飛び出たよ。
「私も大好き」
誰もが理想とする完璧な王子様じゃないけど、一生懸命私の事を考えてくれる貴方が私も大好き。
ちょっぴりおとぼけさんだけど、貴方だけが私の一生の王子様だよ。