short(dream)

□向日葵畑の約束【相葉雅紀】
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今年もまた夏が来た。

「ポチ!散歩行くよ!」

もう向日葵畑にはいかない。

心の中ではそう思っていても、会えないと分かっていても、私の足は向日葵畑に進んで行った。

「雅紀くん、今年もすっごく綺麗だよ。」

ぼんやりと向日葵を眺めていると、突然ポチがリードを引っ張り、あまりの強さに手を離してしまった。

「ポチ⁈」

向日葵をかき分け、ポチの走る方を追いかける。

ポチはある人の前で立ち止まり、そして尻尾を振って甘えた。

「も〜!ポチ勝手に行っちゃダメでしょ!すみません!」

「いえいえ、大丈夫ですよ。」

聞いたことある声に、鼓動が速くなる。

よく知ってる声。
私がずっと聞きたかった声。

「ぷっ…分かる?ドッキリ大成功?」

キラキラと笑う姿ずっと変わってない。

「雅紀くん…!雅紀くん…っ雅紀くん…」

私は雅紀くんの服を握り、地面に膝をついて大泣きした。

「…!」

すると、雅紀くんは私を抱きしめた。

驚きのあまり、心臓が止まるかと思うと彼に聞こえてしまうのではないかぐらい大きく心臓が動く。

「ごめん…俺ね。ここに住んでる親戚のばあちゃんが死んでたから来なくなってさ。来ると悲しくなりそうで行けなかった。せっかく君に会える場所だけど笑顔でいれる勇気がなかった。」

そうだったんだ…

「だから…もっと男として強くなって一人前になったら君に会いたいと思って。だけど、俺君の名前さえ知らなかったから手紙も送れなかった。でも、何かしらの手段で俺が成長した事見せたかったんだ。テレビ…見てくれた?」

見ていた。
あの日は、たまたまテレビを見てて…

雅紀くんが遠くに行ってしまった気がしたんだ。

「ひどいよ…私は毎年向日葵畑で待ってたんだよ。テレビで雅紀くんも見てもただ遠くに行ってしまった気がしただけだったよ。」

「そっか…」

しゅんと抱きしめる雅紀くんの手が緩くなる。

次は私が雅紀くんを強く抱きしめた。

「でも…私のためだったんだね。嬉しい…。雅紀くんすっごく大人っぽくなったよ。それに、テレビを通してずっと知りたかったあなたの名前を知ることが出来た。」

雅紀くんは安心したように優しく微笑んだ。

「俺もずっと知りたかった君の名前聞いてもいい?名前を教えて下さい。」

「ヤッターマン。…怪物くんヤッターマンです。…きゃっ」

雅紀くんが強く抱きしめ返す。

「ヤッターマン。ずっと待たせてごめん。俺、ヤッターマンが好き。ヤッターマンのことがずっと好きだった。」

改めて、雅紀くんが男の子から男性に成長姿に感じた。

堪らず2度目の涙を流す。

「私も好きだよ。雅紀くんが大好き。大好きだよ…」

向日葵畑の真ん中で、何年越しかの告白。

私達の想いが通じあった瞬間だった。

「ヤッターマン、俺ね。これからアイドルとして活躍して行く中ですっごく有名になったとしても、俺は俺だよ。遠くに行ったりしないから。だから、俺の事また向日葵畑で待っててくれる?」

「うん、待ってるよ。」

雅紀くんの言葉を信じる。

これからは雅紀くんはすっごく有名になる。そんな気がする。

だけど、向日葵畑に来れば彼は幼い頃からずっと変わらない。

あなたの笑顔は真夏の煌めく沢山の中で、何よりも輝いている。

end



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