気まぐれに本が増える図書館

□気付いたら処刑人予備軍の見習いになってた
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『さてさて、フィナーレといこうじゃないか、おっさん…自分がしでかしたことぜぇんぶ…その頭に叩き込む……頼むぜ』
そういうと見習い処刑人は後ろを振り向く、そこには誰もいない、だが見習い処刑人にしか見えない"何かが"そこにいるのだ。

『Welcome to the world behind.(ようこそ裏の世界へ) A criminal.(罪人よ) It's time for execution…!(処刑の時間だ…!)』

周辺にそんな言葉がコダマすると同時にサイレンの音が鳴り響く。
そして"彼等"が姿を表した
だが、そこに肝心の見習い処刑人の姿はない。
当たり前だ。
罪人を処刑しにいったのだから…


××××××


「なんだ…サイレン?」
変じゃな、なぜサイレンが…

「な、なんじゃこれは!?建物が…。」
どういうことなんじゃ…嫌な予感がする、この場所を離れなければ。
はやく…


××××××


「この場所ならば見つかることもないじゃろ…やっと休憩ができる。しかし暗いの、もったいないがつけるか」
カチッと懐中電灯のスイッチをonにする。
と、同時にその音と光に反応するように"何かが"動き始めた。

「なんじゃ貴様等!?」
目の前には"ナース"がいた。
だが普通のナースではなかった。
顔がなく、服がボロボロ、その手にはメスが握られている。
そしてゆっくりゆっくりと距離をつめていく。

「く、くるんじゃない!!」
いきおいよく部屋を出たのが行けなかった。
廊下には胴体がなく下半身部分同士が繋がったような"マネキン"や先程いたようなナースがいた。

「どういうことなんじゃ、ワシが何をしたというのじゃ…!!」










『……ここまでくると笑えてくるな』
「!?」
どこからか声が聞こえてくる。

「誰じゃ!どこにおる!!」
声の正体はその低い声で愉しそうに笑っている。だが声が笑っているだけで籠っているのは"つまらない"といった感じのものだ。

『何度かあってんのになぁ…罪人よ』
コツリとヒールをならし表れたのは散々罪人である彼が逃げてきた三角兜の化物だ。

「ワシが何をしたというのじゃ!」
『"言い訳"は聞き飽きた。チャンスをやろう、最期の…ジャッジメントだ。』
「なんのじゃ!!」
『お前が目を逸らし逃げてきた真実、ここでまた逸らすのなら今度は容赦なくお前をコレで斬り捨てるし、"コイツら"もお前を襲う。』
そう言い見習い処刑人は鎖鎌を構えながら周りを小さくぐるりと見た。
周りにはナースとマネキンが構えている。

『よぉーく、考え、判断しろ。一生苦しみたくなければな…』
「ぐっ……」
瞬間頭が痛くなったのか罪人は頭を抑え膝をつく。
罪人の頭の中を駆け巡っているのは自分がやってきた。
そして目を逸らし続けた"真実"

『…』
そんな罪人を冷めた目で見下ろす。
この罪人は轢き逃げを繰り返した愚かな者。
ここで斬られ苦しみ続ける事になっても罪悪なんてものはなく、逆に"コチラ側"がすっきりする。
もし、ここで反省し。
"アチラ側"に帰れたとしても待っているのは地獄のような生活だろう。
そりゃそうだ。
なんたって今回は目撃者が多すぎた。
"子供が飛び出してきた"とか"障がい者だから"というくだらない言い訳では片付けられない案件。
もしそれで通ったとしてもムショ行きにはなる。
どっちに転んだって地獄しかないのだ。
この人間には。

『さぁ、あまりお前にだけ時間は使いたくない。決まったか』
「…」
『最期のジャッジメント…答えろ罪人』

そういい鎌を向ける。
彼は、いや…罪人はポツリポツリと話し出す。

「怖かったんじゃ、ものすごく…嘘をついていた事がバレたら大事じゃと思ったんじゃ。ただでさえ人を殺したのに…だから嘘を突き通すしかなかったんじゃ…」
『それで…?結局は周りに迷惑をかけた…違うか?』
「なんじゃと…」
『…変わらなかったのか?いや、変わったことは何も無かったのか?』
「…物が、減っておった」
『やはりな』
「わからん…どういうことじゃ」
『そんなもの簡単だろうが、子供轢き殺してごめんなさい…で、終わるとでも?……金だよ、金。被害者家族は腹痛めて産んだ子殺されてんだ。家によっちゃ貧乏でその子が稼ぎ元にもなってたかもしんねぇんだぜ…?』
「ま…さか」
『そういうこった……おっと話がそれたな』
ナースにとんとんと肩を叩かれた。

『…反省してるんだったら出ていけ、もし反省できていなければ…瞬時に襲われっからよ。そして、2度と"くるな"』
「…」
のそりと罪人が歩きだす。
マネキンやナース達は襲わない。
背後で気配がスッと消えた。

『…処刑人も、楽じゃねぇな、なぁ?』
「…」
近くにいるナースに声をかける。
が、返事はない

『一端の処刑人になるからな、俺は』
そう、このサイレントヒルには他にも処刑人がいる。
そのはずなのにこの見習い処刑人が表れたのだ。
クリーチャー達にとっては異質。
死した人間が新たに処刑人になるなどということは。
それにあくまでも見習い、まだクリーチャーではなく、クリーチャー達の言葉はわからない。
先程無言に見えたナースも実際は"クリーチャーの言葉"で喋っていたのだ

「"なぜ貴方のような子供が処刑人になったの"」

と。


××××××


子供がきたの、でもその姿はあの処刑人のようで。

少し震えたわ。

だって、子供で、処刑人。

まだクリーチャーにさえなっていない子。

でも何故この子供がクリーチャーとして生を得たのかなんとなくわかったの。

それは人間離れした身体能力、人間ではありえない動きをするの。

まぁ…あの処刑人もあんなには動けないでしょうけど。

まだまだこの子の事を私は知らないわ。

だってさっき会ったばかりだもの。

けど、悪い子じゃないって事、処刑人として事実そしてやるべき事理解している事はなんとなくこの子から感じるの。

そしてあの子は言ってくれたわ。

私達の味方だって、この子はきっと立派な処刑人になると思うわ。

そういえば名前も聞いたの、そしたら生前の名前は捨てたっていったのよ?

だけどね、あの子はあの時笑っていたのだと思うの、そう…笑いながら"ブロー"って名乗ったの。

素敵な名前だと思ったわ。

これからあの子ときちんと向かい合って知っていきたいわ。

私分かるもの、あの子はきっと素敵なクリーチャーの処刑人になるって…ね?






*****


はい、ジジイ編終了。
結局ジジイは元の世界に戻って無事捕まりました。
次はそうだなぁ…女子高生編にでもしようかな…?
それか息抜きに短編…
まぁどっちでもいいか…
それではここまでお疲れ様であります。
次のお話でまた会いましょう


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